【美容栄養学】あさりのビューティーパワー

著者:池上淳子
管理栄養士/美容食インストラクター
日本ビューティーヘルス協会 会長
池上淳子

あさりの栄養、美容効果

あさりの美味しさは何といってもうま味です。そしてズバ抜けた豊富な栄養。これは、食べるしかありません!!あさりの栄養、美容効果、あさりに含まれるコハク酸などの成分についてお伝えします。また栄養や美味しさをアップさせる砂抜きの方法や調理法をご紹介します。

あさりの基本情報

学名

Ruditapes philippinarum (Adams & Reeve, 1850)

和名

あさり/浅蜊、蛤仔、鯏

分類

マルスダレガイ目、マルスダレガイ科、アサリ属

形態

二枚貝
貝殻は普通灰褐色を帯び、不規則な模様があり変化に富んでいる。殻の表面には細かい成長線と放射状に入った線があり、触った感じはざらついている。

分布

日本各地の沿岸、東シナ海、フィリピンなど

産卵期

アサリは海水の温度が20度前後になる春と秋、年2回ある。産卵直前が、身が太り、うまみ成分のコハク酸も増えて、一段と美味しくなります。

生態

産卵、ふ化後浮遊生活を送り、その後海底に着底し、海底の砂礫などに付着。やがて砂泥中に潜り、海中の珪藻など植物プランクトンや有機懸濁物を食べて成長するため、赤潮プランクトンなどを摂食、消化する生物浄化作用が期待されている。

アサリは卵で増え、地域により年に1回~2回産卵をしますが、1回の産卵で50~100万個、多いときは200万個以上産むときもあります。

直径0.06㎜ほどの卵からふ化し、海を漂いながら1か月ほどで、0.2mmほど成長、着底し砂に潜って生活が始まります。約1年半~3年ほどかかり、よく見るアサリの大きさに成長します。

アサリは海中の植物プランクトンを餌にしています。エラで海水中のプランクトンを摂り入れていますが、フィルターでろ過をすることと、同じ働きをするので、水質浄化をしていることになります。ありがたい存在です♪

アサリ成体1個(10g)あたりのろ過量は、1時間あたり約1リットルと言われています。10個のアサリがいれば、お風呂一杯分の水が1日でろ過される計算になります。
このように浅瀬では、アサリの浄化能力が環境保全に非常に重要な役割を担っています。

引用元 https://umito.maruha-nichiro.co.jp/article35/

あさりの栄養

あさりは100g中、27kcalと低カロリー、低脂質です。カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラルが豊富です。これらのミネラルは多くの方が不足しがちで、日々必要量が摂りにくいものです。代謝に非常に重要なミネラルで、更に、カルシウムやマグネシウムは骨の材料になりますし、鉄は血液の材料になります。あさりを活用して積極的に摂りましょう。

あさりの美容効果

たるみ予防

コハク酸

コハク酸は貝類に多く含まれる旨味成分物質のひとつです。はじめの発見はドイツの鉱物学者ゲオルク・アグリーコラ「鉱山学の父」として知られていますが琥珀の乾留から発見したことから、コハク酸「琥珀酸」と名付けられました。

コハク酸は1932年、昭和7年に農学士の青木克氏が旨味抽出物の中にコハク酸を発見し 「貝類中に琥珀酸の存在に就て」 という論文が発表され、貝類に多いというイメージが定着しました。

論文:貝類中に琥珀酸の存在に就て https://www.jstage.jst.go.jp/article/nogeikagaku1924/8/8/8_8_867/_pdf/-char/ja

貝類の有機酸,とくコハク酸含量について
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs1949/20/3/20_3_186/_pdf/-char/ja

コハク酸は2つのカルボン酸(COOH)を含む、ジカルボン酸です。

構造は旨味成分の代表であるアミノ酸のグルタミン酸ナトリウムと似た構造をしているため、旨味を感じると言えます。

褐色脂肪細胞(Brown Adipose Tissue:BAT)とは

脂肪細胞には「白色脂肪細胞」と「褐色脂肪細胞」の2種類があります。これらは、細胞内に中性脂肪を蓄えていますが、役割が異なります。白色脂肪細胞は、エネルギー不足に陥った時に中性脂肪を脂肪酸として放出してエネルギー不足を補います。そのため主な働きは脂質を蓄えることです。

褐色脂肪細胞について、こちらの記事も参考になります
【ダイエット】体に溜まった脂肪を減らす方法

褐色脂肪細胞は、ミトコンドリアが多い脂肪細胞で鉄に由来する褐色を呈しています。中性脂肪が分解して出てきた脂肪酸の大部分を細胞内で分解して熱に変換します。主な働きは脂質を熱に変換することです。

新生児や乳幼児などの首や脇などに存在する褐色脂肪細胞は成人になるに連れて、消失すると言われていましたが、最近の研究では成人でも活性のある褐色脂肪細胞様の細胞が存在していることが明らかになっています。

例えば、イヌはヒトと同じように成人になると褐色脂肪細胞が消失すると言われていますが、寒冷刺激などにより、白色脂肪細胞に褐色脂肪細胞がもつUCP1が発現することが発見されてから、同様にヒト成人でも足裏の冷却刺激を2時間行うと肩や背骨周りを中心に褐色脂肪細胞が確認されています。

ヒトは体温が常に36℃前後に保たれている「恒温動物」です。この体温維持にはエネルギーが必要です。基礎代謝量が夏よりも冬のほうが5~10%程度高いといわれており、寒さはエネルギー消費を増やすことになります。

ヒトでも褐色脂肪細胞様の細胞は存在しています。

UCP1(脱共役タンパク質1)とはミトコンドリアの酸化的リン酸化を脱共役させる作用があり、これによってATP合成ではなく熱産生にエネルギーが回されます。

褐色脂肪細胞のミトコンドリアにはUCP1が発現しています。褐色脂肪細胞のミトコンドリアはATPを作り出さず、熱を作り出しています。

※ミトコンドリアとは
ブドウ糖や脂肪などをエネルギーに変換する働きがある。

コハク酸のダイエット効果

代謝産物のひとつであるコハク酸ですが、褐色脂肪細胞がコハク酸を吸収して、細胞内のミトコンドリアに代謝されると活性酸素が発生し、UCP1が活性化され熱産生を増加させることが明らかになりました。

これまで、褐色脂肪細胞を活性化させる方法として身体を低温にさらす低温曝露によってBATの細胞内脂質分解を引き起こし、UCP1を活性化させることが分かっています。

そして今回は、コハク酸による褐色脂肪細胞の熱産生活性化のメカニズムを解明しました。

この実験では、食餌性肥満マウス(高脂肪食、高エネルギー食を摂取させて肥満にさせたマウス)にコハク酸を入れた飲料水を与えると体重の増加が抑制され、体重減少が認められました。更に、耐糖能が改善した結果が得られました。これらの効果が褐色脂肪細胞による熱産生によるものであることを確かめられました。

『Nature』誌に新しく発表された研究、米ハーヴァード大学医学大学院の細胞生物学助教授で、ボストンにあるダナ・ファーバー癌研究所の癌生物学助教授であるエドワード・シュシャーニが率いる研究チームによる

コハク酸は、主に筋肉から血中に放出されます。コハク酸はBATだけに吸収され、ミトコンドリア内で迅速に代謝されます。ミトコンドリアによるコハク酸の酸化は、活性酸素種の産生を促進し、UCP1の活性化と熱産生を引き起こし 全身のエネルギー消費の上昇を可能にします。

活性酸素のようなフリーラジカル(遊離基)は、細胞損傷を引き起こす原因のひとつです。

活性酸素が体に及ぼすメカニズム
https://eiyo-c.com/kasseisanso/

しかし、活性酸素がこの反応に大きく関わっています。

また研究では、コハク酸塩は「脂肪の大幅な減少、ならびに肥満や糖尿病指数の上昇を防ぐという点において、目覚ましい効果があった」といっています。さらに詳しい研究が必要ですが、肥満や糖尿病の治療法になる可能性を秘めていると言われています。

BCAA catabolism in brown fat controls energy homeostasis through SLC25A44
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1503-x
コハク酸が褐色脂肪の活性化させる
https://www.nature.com/articles/s41586-018-0353-2
Accumulation of succinate controls activation of adipose tissue thermogenesis
https://go.nature.com/2LY9Nay
NHK美と若さの新常識
http://www.nhk.or.jp/beautyscience-blog/2020/184/435674.html

貝類のコハク酸含有量

・シジミ 128㎎%
・アサリ 80㎎%

アサリは海で生存し、海水で酸素を吸って生きています。ところが環境に伴い、波にで海岸の砂浜に打ち上げられると酸素が吸えなくなり、息苦しくなります。コハク酸は生物が呼吸するときに作られて消費されるもののため、息苦しく呼吸がしにくい環境にさらすことで、体内のグリコーゲンを分解してコハク酸を多く作り出します。生きるために、多くのコハク酸を作り出すのです。採取後、空気中に放置すると、時間経過に伴って、コハク酸はどんどん増えていきます。しかし、命の維持には限界があります。時間が経ちすぎるとコハク酸が消耗し、死んでしまいます。

アサリのコハク酸含有量は個体の大きさによって違いますが、一例をあげると、採れたてのアサリはコハク酸が100g中63mgなのに対して、パック詰めは98mgと増えたデータがあります。特に、夏期に増加量が多いです。

引用元: https://washoku-no-umami.jp/succinic-acid

参考論文:貝類の有機酸,とくにコハク酸含量について https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs1949/20/3/20_3_186/_pdf/-char/ja
貝類に含まれるうま味成分「コハク酸」の生成メカニズムと含有量アップの方法
https://washoku-no-umami.jp/succinic-acid

グリシン

海の中の塩分濃度は不安定で、潮の流れや天候によって左右されます。
それでも、海で生きる生き物たちは影響を受けながらも生きていきます。

高い塩分濃度の中では、浸透圧の作用により、細胞から水分が外に出てしまいます。
きゅうりを塩もみしたら、浸透圧の関係できゅうりの中の水分が塩分濃度の高い外へ出ていく、という事と同じです。
すると、細胞内の水分が減り、縮んでしまい、細胞の働きが弱くなります。
あさりは生きていく環境で、塩分濃度が高くなると、細胞の中でグリシンというアミノ酸を増やす働きがあります。
細胞内にグリシンをたくさんつくることで、浸透圧が解消され、水分が外にでることを防いでくれます。

グリシンはコラーゲンの材料になるアミノ酸

コラーゲンを構成するアミノ酸
グリシン 34%
プロリン 12%
アラニン 11%
ヒドロキシプロリン 10%
その他

コラーゲンは皮膚の真皮層にある、弾力性線維として肌のハリや維持を担っています。体内のタンパク質の約30%がコラーゲンと言われ、皮膚だけではなく、骨や関節などあらゆる箇所で重要な役割をしています。コラーゲンは加齢により減少します。美容のため、健康のためにコラーゲン生成を促進することは重要です。

グリシンと睡眠

グリシンは睡眠の質の向上を上げる効果が期待できます。入眠は深部体温を低下させることで眠りにつきます。グリシンには表面血流増加作用があり、深部体温低下を起こし、睡眠改善効果が示されます。そして起床時の良い目覚め、日中の眠気の改善、疲労感の軽減など質の良い睡眠を得られることでしっかりと休息をし健康を維持します。

参考論文:アサリ受精卵ならびに浮遊幼生の成長と 生残に与えるグリシンの影響について https://www.fra.affrc.go.jp/bulletin/fish_tech/5-1/02.pdf

塩分変動に対する適応
https://www.pref.shimane.lg.jp/industry/suisan/shinkou/suigi/publish/kenkyuhou/kenkyu09/index.data/09-04.pdf

甲殻類における遊離型 D-アミノ酸の 生理機能
http://www.d-amino-acid.jp/2013journal/2013-2.pdf

NHK美と若さの新常識
https://www.nhk.or.jp/beautyscience-blog/2020/184/435675.html

アミノ酸グリシンによる睡眠改善効果の作用機序解明
file:///C:/Users/Junko%E3%80%80Suwa/Downloads/B17909_abstract.pdf

あさりの砂抜き方法

グリシン

あさりは川の影響で塩分濃度が少し薄い環境に住んでいる場合が多いです。そこで海水の塩分濃度にいれることで、塩分濃度が高いため、浸透圧の調節をして細胞内のグリシンを高める働きがあります。

グリシンを増やす方法

3%の塩水を作ります
500㏄の水に大さじ1の塩が目安です。
バッドの中に軽く洗ったあさりを重ならないように入れて、作った塩水を入れて、まな板や新聞紙などをかぶせて
冷蔵庫で3時間以上、置きます。
あさりのグリシンが約1.7倍増えると言われています。

コハク酸

あさりは移動することが難しく、周りの環境に流されやすくあります。そのため、波で砂浜に打ち上げされることもあります。干潮の状態です。海の中だと、酸素をたっぷりとり入れて元気な状態ですが、砂浜に打ち上げられると、息ができず苦しい状態になります。これは自然に海の中にいると、よくあることです。そんな息ができない環境になっても死なないようにあさりは体内にコハク酸をためて生き延びようとします。

コハク酸を増やす方法

冷蔵庫で3時間以上置いたら、水道水で洗って、バッドやざるに広げて、空気にさらすようにします。濡らしたキッチンペーパーをかぶせます。冷蔵庫ではなく、常温に置きましょう。冷蔵庫の中では代謝が抑制される為、コハク酸はたまりません。 あさりは30℃くらいの暑さでも3時間くらい十分生きます。 あさりのコハク酸が約5倍増えると言われています。

NHK スーパーアサリの作り方
https://www.nhk.or.jp/beautyscience-blog/2020/184/435677.html

あさりの保存方法

あさりは冷蔵保存、冷凍保存、どちらも可能です。

参考サイト
あさりの保存方法 クックパッド

あさりの調理方法

冷凍のあさりの調理方法

冷凍したあさりは解凍せずに凍ったまま調理します。解凍すると蓋が完全に開ききらないことが多いため、出来るだけ短時間で一気に加熱すると蓋がキレイに開きます。

あさりの殻が開く

短時間で加熱する

あさりの蓋が開いてからも加熱を続けるとあさりの身が縮んで固くなります。蓋がひらいた時点で出汁は十分でています。そのため、蓋が開いたら火を止めるか、あさりだけ取り出します。取り出したあさりを仕上げの段階で戻します。

あさりを活用したレシピ

あさりのピラフ|炊飯器でつくる|美容食レシピ
※レシピ掲載しています。

あさりのピラフ

参考サイト:
旬の食材百科
https://foodslink.jp/syokuzaihyakka/syun/fish/asari4.htm
東京都島しょ農林水産総合センターhttps://www.ifarc.metro.tokyo.lg.jp/archive/27,1025,55,226.html