活性酸素が体に及ぼすメカニズム

活性酸素

著者:池上淳子
管理栄養士/美容食インストラクター
日本ビューティーヘルス協会 会長
池上淳子

空気中の酸素は比較的安定していますが、呼吸によって体内に取り入れられた酸素は、エネルギーを作り出す代謝の過程で不安定な状態になります。
不安定になると、近くにある物質と盛んに結びつき、酸化力が強い「活性酸素」が生成されます。

生きていくために吸った酸素から毒性の強い活性酸素が作り出され、細胞を酸化して傷つけ、生活習慣病や老化などを引き起こす一因になります。
酸素を吸って生きている人間にとって、代謝の過程で発生する活性酸素の害は避けることができません。

ここでは、活性酸素による体内での酸化や抗酸化物質の体内でのメカニズムに特化して、科学的に、できるだけ詳しく、できるだけ簡潔に説明しています。
参考にしていただけると幸いです。

活性酸素

大気中には、21%の酸素が含まれています。
人間を含めた動物は、生命活動を営むために、酸素を利用してエネルギーを生み出しています。そのため、生きていくために必須です。
呼吸をすることで、体内に取り込まれた酸素の一部は、通常の状態より活性化された活性酸素になります。
呼吸により体内に取り込んだ酸素の2~3%が活性酸素に変わるといわれています。

活性酸素生成のメカニズム

酸素は8 個の電子をもちます。
電子は2つが対になって存在しますが、対ではなく1つだけ離れて存在するとき、フリーラジカルになり、反応性が高くなります。
電子は対になると安定し、不対電子は不安定で、対になるために相手から電子を奪って、対をつくって安定になろうとします。

酸素分子が体内に入ると、次々に他の物質から電子を奪い、より反応性に富む不安定な化学種に変化していきます。
つまり、酸素はラジカルを 2つもち、そこに電子が1個入ってくるとラジカルの性質が片方だけ消されます。
するともう一方のラジカルの性質が強くなって、弱酸性で解離してアニオンになります。
これがスーパーオキシドアニオンラジカルです。
これは、一般的に「スーパーオキシド」と言われています。

※ラジカル (radical)
不対電子をもつ原子や分子、あるいはイオンのことを指す。フリーラジカルまたは遊離基(ゆうりき)とも呼ばれる。

活性酸素はラジカルと非ラジカルがあります。
脂質関連物質を含む広い意味の活性酸素の中で、ラジカルは反応性の高いものからヒドロキシラジカル、,アルコキシラジカル 、ペルオキシラジカル、ヒドロペ ルオキシラジカル、一酸化窒素、 二酸化窒素などがあります。

非ラジカルには一重項酸素、オゾン、過酸化水素、脂質ヒドロペルオキシドなどがあります。
体内でのフリーラジカルは、ほぼ酸素を含むもので、活性酸素を指すことが多く、時にはフリーラジカルと同一している場合が多くあります。
組織細胞レベルに影響を及ぼす活性酸素は,フリーラジカルとして スーパーオキシドアニオンラジカル 、ヒドロキシラジカルで、非ラジカルとして過酸化水素 があります。

生体系でスーパーオキシドアニオンラジカルの 生成はキサンチン酸化酵素、アルデヒド 酸化酵素、NAD(P)H 酸化酵素などによる酵素的反応による場合と薬物の酸化により生成するラジカルによって、酸素分子 が一電子還元を受け 、スーパーオキシドアニオンラジカルが生成される非酵素的反応によって誘導されると言われています。

生理的条件下では、スーパーオキシドアニオンラジカルを発生するのは、血液中、組織液、細胞内顆粒にて酵素系により行われます。

白血球は好中球やマクロファージを含みますが、ある刺激によってNAD(P)Hオキ シダーゼの活性が高まり、スーパーオキシドアニオンラジカルが生成されます。
スーパーオキシドアニオンラジカルは殺菌作用を示しますが、過剰の生成は炎症を引き起こすことになります。
ミトコンドリアでは、電子伝達系によりATPを合成する過程でスーパーオキシドアニオンラジカルを生成します。

CoQ の 1 電子還元で生じた CoQ ・-により O2 が 1 電子還元を受けて スーパーオキシドアニオンラジカルが生じるものである。ミクロソームでのスーパーオキシドアニオンラジカルの生成は NADPH 依存性チトクローム P450還元酵素と関係している.ブロメラインのようなタンパク質分解酵素でミクロソームを処理した場合と界面活性剤で処理して得たチトクロームP450 還元酵素とでは NADPH 存在下における O-2 ・の生成に差が あると言われている.後者の場合,ミクロソーム での O-2 ・の生成は NADPH 依存性チトクロームP450 還元酵素と P450 がリンクして,ADPH から放出された1電子が O2 に渡され 1 電子還元を受けてスーパーオキシドアニオンラジカル が生成される.

活性酸素,過酸化脂質,フリーラジカルの生成と消去機構 並びにそれらの生物学的作用 YAKUGAKU ZASSHI 122(3) 203―218 (2002)

活性酸素の有益な働き

活性酸素は、ヒトが生きる上で非常に重要な働きをしています。
そのひとつが殺菌作用や解毒作用です。
体内に細菌やウイルスが侵入してくると、好中球やマクロファージと呼ばれる免疫細胞が、自らも「活性酸素」を作り出し、その強い殺菌力で病原体や有害物質を退治してくれるとされます。
このように「活性酸素」は、有益な物質ではありますが、過剰になれば細胞傷害をもたらすと言われています。

活性酸素が増える原因

次のような場合、通常の呼吸により発生する何倍もの活性酸素が生成され、様々な病気や老化を引き起こす要因といわれております。

激しい運動、肉体的にきつい仕事などで大量に酸素を消費したとき
高密度の酸素吸入・摂取をしたとき
体内に病原菌やウイルスなどが侵入してきたとき
喫煙、車の排気ガスや工場の排煙を多量に吸ったとき
大きな手術をしたとき
強いストレスを感じたとき
大量の紫外線を浴びたとき
放射線(レントゲン、放射線療法など)を浴びたとき
体内に医薬品などの化学物質が入ってきたとき
電磁波(携帯電話、パソコン、高圧線など)を浴びたとき
多量飲酒 など

活性酸素の害

活性酸素は、細胞伝達物質や免疫機能などの働きがありますが、その一方で、過剰な産生は細胞傷害の原因となりま、直接ないし間接に全疾患の9割以上に関与しているといわれています。

1980年代に「ガンができる原因は過剰な活性酸素の発生による」という研究結果が続々と発表されました。
研究が進むにつれ、心筋梗塞、脳卒中などの生活習慣病も、大量の活性酸素により生じた過酸化脂質が原因である、老化の最大の原因である、など明らかになりました。 
ガン、心血管疾患、生活習慣病などの様々な疾病の要因となります。
また、しわやシミなど肌老化の原因や疲労感、倦怠感などの症状の原因になるとも言われています。
そして、文明が進化するほど体内に大量発生すると言われています。 

活性酸素を抑制する働き

ヒトが抗酸化物質を必要とする理由は、有害でもある「活性酸素」に満ちた生活の中で、一息ごとに体内で生成しているとされるからです。
生体内には、活性酸素の傷害から守るための抗酸化防御の機構が備わっています。
活性酸素は、生体内で常に作られていますが、その活性酸素から防御する抗酸化防御機能が生体内に備わっているため、体内の恒常性を維持できています。
抗酸化防御機構は、活性酸素の産生を抑制することや、生じてしまったダメージの修復、再生を促す働きを持っています。
活性酸素の産生と抗酸化防御機構が作用し合っています。

抗酸化防御機構

内因性の抗酸化酵素
 スーパーオキシドジスムターゼ
 カタラーゼ
 グルタチオンペルオキシダーゼなど

外因性の抗酸化物質
 ビタミンC
 ビタミンE
 カロテノイド類
 カテキン類など

抗酸化を促進する生活習慣

健康な体の状態は、活性酸素の産生と抗酸化防御機構のバランスが取れています。
活性酸素の産生が過剰になったり、抗酸化防御機構が劣ると、バランスが崩れた状態になり、上記のような疾患や老化などになるリスクが上がります。
紫外線、放射線、たばこ、薬剤、激しい運動、ストレスなどは活性酸素の産生を促進する要因です。
また、生理的な状態や外部からの刺激だけではなく、病的な状態( 虚血再灌流 など)によっても発生します。
そのため、バランスの取れた食事、適度な運動習慣、十分な質の良い睡眠、規則正しい生活習慣を心がけ、抗酸化防御機構を良好に保つことが健康や美容に欠かせません。

活性酸素のメカニズム

大気中に21%含まれている酸素は三重項酸素と言い、安定な状態で存在しています。
ところが、生体内に入ると、酸化反応が起こり、一部、活性酸素が作られます。

活性酸素の種類

活性酸素は4種類、その他のフリーラジカルは現在わかっているだけでも数千種類あるといわれています。

スーパーオキシド:三重項酸素を一電子還元したもの
人間の生存中で最初に最も多く発生する活性酸素といわれます。

過酸化水素:三重項酸素を二電子還元したもの
スーパーオキシドがSOD酵素や他の抗酸化物質で処理された結果生まれます。

ヒドロキシラジカル:三重項酸素を三電子還元したもの
最強の活性酸素といわれます。

一重項酸素:通常、電子配置の反結合軌道に電子スピンの方向が同じ方向で入っているのに対して、逆方向になっているもの
紫外線を浴びることにより発生する非常に強力な活性酸素といわれます。

活性酸素の発生する場所

体は通常の状態であっても、絶えず活性酸素が生じています。
そして、それに対して、防御系も備わっています。
幹細胞を用いた実験で、活性酸素の発生する場所は、小胞体45%、ペルオキシゾーム35%、ミトコンドリア15%、細胞質及び核5%という報告があります。

また、主な活性酸素の発生場所と関連する体内酵素はミトコンドリア電子伝達系、小胞体、血管内皮細胞、白血球、還元物質の自動酸化などがあげられます。

抗酸化酵素・抗酸化物質の存在場所や働き

種類

スーパーオキシドジスムターゼ:
全細胞に存在、細胞質、赤血球内、ミトコンドリアなど

カタラーゼ:
ペルオキシソーム、赤血球内、過酸化水素の分解など

グルタチオンペルオキシターゼ:
脂質ペルオキシド、過酸化水素の分解、細胞質に約75%など

グルタチオン:
細胞内外で親水性の主要抗酸化低分子化合物

ビタミンE(αトコフェロール):
脂溶性で細胞膜でスカベンジャーとして作用 など

ビタミンC(アスコルビン酸):
親水性の還元物質、ビタミンEの還元作用 など

スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)

SODは、スーパーオキシドを不均化反応により消去する酵素です。
生体内で生成される活性酸素種の多くはスーパーオキシドに由来することから、SODは抗酸化システムの最上流に位置しているといえます。
その反応の結果生じる過酸化水素はスーパーオキシドにより還元された遷移金属イオン(鉄や銅など)がある中で、ヒドロキシラジカルを生成(フェントン反応)しますが、SODはスーパーオキシドとこれらの金属イオンとの反応を阻害することで、ヒドロキシラジカルの生成を抑制し、生体防御の役割を果たしていると考えられています。

3種類のSODアイソザイム

※アイソザイムとは:同じ化学反応を起こすことができるが酵素を構成するタンパク質の一次構造が異なる2種以上の酵素をいう。

CuZn‐SOD
細胞質に多く存在し、特に肝臓や赤血球中に多く含まれる。
加齢や高血糖状態に暴露されることで、非酵素的に糖化反応を受けて活性が低下することから、老化や糖尿病合併症などとの関連性が推察されている。

Mn-SOD
ミトコンドリアにあり、サイトカイン(インターロイキン、腫瘍壊死因子など)により誘導され、細胞防御の観点からも期待されている。

EC-SOD
単量体当たりCu、Znを1分子ずつ含有し、ヘパリン結合ドメインを持つ糖タンパク質だが、このヘパリン親和性は糖化反応により失われる。
血清中に発見されたが、肺、すい臓、腎臓など組織中にも存在する。

グルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)

主に細胞質に存在しています。GPXは還元型グルタチオン(GSH)の酸化に共役して過酸化水素や、その他の過酸化物を還元し水酸化物を生ずる反応を触媒します。

カタラーゼ(CAT)

微生物から植物、動物まで、好気性代謝を行うほとんどの生物に存在するもので、過酸化水素の不均化反応を触媒する酵素です。
プロトヘムを活性中心に持つヘムタンパク質です。
動物では主に赤血球、肝臓、腎臓に分布し、肝臓、腎臓の殆どのCATがペルオキシソームと呼ばれる細胞小器官内にあります。
ペルオキシソームには様々なオキシダーゼなどの過酸化水素産生酵素が存在し、それらから発生する過酸化水素をカタラーゼが解毒していると言われています。
過酸化水素は生理的なphで自由に細胞膜を透過し拡散するので、CATによる過酸化水素の代謝は活性酸素に対する生体の防御機構において重要えあると考えられています。

グルタチオン(GSH)

全臓器の細胞内に高濃度に存在します。
グルタチオンは薬物代謝や抗酸化防御反応において主要な役割を担っています。
GSHは細胞質やミトコンドリアなどに高濃度存在していますが、特に細胞質では薬物代謝第Ⅱ相の反応を触媒し、多彩な薬物を抱合してメルカプツール酸として尿中に排泄します。
GSHはグルタチオンペルオキシダーゼの存在下に過酸化物や過酸化水素を還元処理したり、フリーラジカルと直接反応することで、酸化ストレスから生体を守っています。
このとき、GSHは酸化型グルタチオンになるが、グルタチオンレダクターゼとNADPHにより再び、GSHに還元されるため、その大部分はGSHとして維持されています。

β‐カロテン

カロテノイドは長鎖の共役二重結合を有しており、赤、黄、紫色などの色素の総称で、緑黄色野菜、果物、海藻類、魚介類などの食物中に多く含まれる物質です。
自然界には500種類を超えるカロテノイドが存在し、β-カロテンはその代表的な物質になります。
βカロテンは活性酸素の一種である一重項酸素やフリーラジカルを消去する抗酸化作用があり、さらにプロビタミンA活性があります。
一重項酸素はβカロテンより高いエネルギーを持つため、そのエネルギーが物理的にβカロテンに移動して安定な三重項酸素(通常の酸素)に変換されます。
βカロテンに移動したエネルギーは熱になり、βカロテン自身は元の状態に戻ります。
そのため、βカロテンは一重項酸素の消去で分解変性はしないで、繰り返し消去作用ができることになります。

共役二重結合が多いリコペンは、βカロテンより一重項酸素の消去能が高くあります。
βカロテンの一重項酸素の消去能はビタミンEの50倍以上と高く、ビタミンEより低濃度であっても一重項酸素による脂質過酸化反応を抑制できます。
一方フリーラジカルの消去に際しては、ラジカルに水素原子を供与する抗酸化作用とは異なり、βカロテンの共役二重結合がラジカルを捕捉することによって抗酸化作用を示しています。
脂質ペルオキシラジカルもβカロテンによって、連鎖的な脂質過酸化反応が抑制されますが、ビタミンEの抗酸化能よりは作用が小さくなります。

食事で摂取したβカロテンは小腸粘膜から吸収されたあと、カイロミクロンに取り込まれて、リンパ系から血液中に輸送されます。
カイロミクロンはリポタンパクリパーゼによってカイロミクロンレムナントに分解され肝臓に運ばれて、βカロテンとして貯蔵されるかビタミンAに変換されます。

小腸粘膜では、βカロテンがビタミンAのレチナール、レチノール、レチノイン酸に代謝されます。
血漿中のβカロテンはVLDL、LDL、HDLのリポたんぱく質に分布し、特にLDLに多く含まれています。

一時的にハードな運動をすると、安静時の値の高低にかかわらず、運動直後の血漿βカロテン濃度は有意に低下します。
運動による血漿βカロテン濃度の減少は、LDL中のβカロテンが、LDLまたは組織における抗酸化作用によって、消耗したことを反映していると言われています。
1か月間のβカロテン投与(30㎎/日)後にはDNAの酸化的損傷が減少しました。
しかし過剰なβカロテン摂取は肺ガンなどに促進する可能性もあるとされ、酸化ストレスを軽減するための、一定量以上のβカロテン摂取については注意が必要とされています。
そのため、食事から摂取して、サプリメントなどの利用は避けましょう。

ビタミンC

ビタミンCは生体内の抗酸化システムで最も重要であり、毒性が少ないと言われています。
アスコルビン酸は2つの水素イオンの脱離によりデヒドロアスコルビン酸になります。
この酸化型は還元型グルタチオンなどによって非酵素的に還元され、再びアスコルビン酸に戻ります。

ビタミンCは水溶性のため、体内では細胞質や細胞外の血漿などに存在し、主に水相に存在するラジカルを捕捉します。
実験室レベルではビタミンCは血漿中の脂質やLDLの過酸化をほぼ完全に防御できます。
その作用は、尿酸やビリルビンなどの水溶性抗酸化物質より強いと言われています。

ビタミンCは細胞膜脂質や血漿リポタンパク質の抗酸化に働くビタミンEの再生にも関与しています。
ビタミンEがラジカルを捕捉するとビタミンEラジカルになりますが、ビタミンCはこのラジカルを捕捉してビタミンEを再生します。
この時、ビタミンCラジカル(モノデヒドロアスコルビン酸)が生じますが、これはNAD(P)Hを電子供与体とするモノデヒドロスコルビン酸還元酵素の働きや、自発的な不均化反応によってビタミンCとデヒドロアスコルビン酸に代わります。
そのため、食物から十分なビタミンCを摂取すれば、ビタミンEの抗酸化効率を上げることができます。
血清中の脂質過酸化はビタミンCが完全に酸化型になったあとで発生します。
還元型ビタミンCが残存しているうちは脂質の過酸化はみられません。
それは、脂質の抗酸化に直接関与するのは主にビタミンEですが、脂質層内の酸化型ビタミンEの還元にビタミンCが介しているからだと思われます。

10人の男子大学生に最大酸素摂取量の80%のランニングを毎日30分間行わせ、ビタミンC1g/日投与すると2週間後には過酸化脂質の生成量が有意に低下したという報告がある。ビタミンCの抗酸化作用を期待して運動選手に投与し、パフォーマンスの変化を調べた実験は数多いが、ビタミンCの服用の効果を認める報告と、無効であるという報告がある。しかし悪影響を及ぼすという報告はない。ビタミンCはグラム単位の量で摂取しても過剰障害はないと考えられており、運動選手には所要量以上の摂取が勧められている。

杏林書院 活性酸素と運動

ビタミンE

ビタミンEは、抗酸化作用を介して種々な薬理的作用を発揮する、食物に含まれる有効なラジカル捕捉物質です。
ビタミンE類は4つのトコフェロールとそれぞれに対応する4種のトリエノールが知られています。
ビタミンEは脂溶性ビタミンで、細胞膜脂質や血漿リポタンパク質内に存在し、そこで進行する脂質過酸化のラジカル連鎖反応で、脂質ペルオキシラジカルを捕捉することで酸化を抑制しています。

生成したビタミンEラジカルはビタミンCにラジカルが捕捉されてビタミンEに復活します。
脂質ペルオキシドラジカルとの反応性にはトコフェロールの種類に差があり、αトコフェロールが最も反応速度定数が大きくなります。
そのため、最も抗酸化活性が強い植物中にはγトコフェロールが多く含まれますが、ヒトがこれを摂取しても体内にはα型しか検出されず、α型以外の同族体は排泄されるものと思われます。

ポリフェノール

ポリフェノール類(フラボノイド、タンニン、カテキンなど)はフリーラジカル除去効果が期待されます。
フラボノイドはフェニルクロマン骨格を基本構造とするフラボノール、アントシアンなどの天然色素の総称です。
フランスのある地方において脂質の多い食事を摂っているのに、冠動脈疾患による死亡率が低いことが明らかになり、「フレンチパラドックス」と呼ばれるこの現象が注目を集めています。
赤ワインに含まれる多くのポリフェノール類が抗動脈硬化作用があると、考えられており、ワイン摂取量が多いほど、心臓病死亡率は低いという関係が示されています。

フラボノイドは一重項酸素やラジカルの消去活性があり、更に過酸化水素除去にも関与しているほか、ヒドロキシラジカルを効率よく除去できるなど、広範囲にわたる抗酸化作用を持ちます。
タンニンは脂質過酸化を抑制し、脂質連鎖反応において生じたラジカルに対して、水素供与体として働き、フリーラジカル連鎖を止めると考えられています。
茶カテキン類や紅茶に含まれるエピカテキンやエポカテキンガレートなどのテアフラビンは強いフリーラジカル除去作用と脂質過酸化抑制作用を持ち、特に食用油脂に対する抗酸化能力が強いことが明らかになってきました。
その抗酸化能はアスコルビン酸やトコフェロールなどの他の抗酸化物質の効果を増強する可能性も期待されています。

その他

セルロプラスミン:
ヒト血清のα2ミグロブリン領域で銅を結合した青色の糖タンパク質

メタロチオネイン:
61個のアミノ酸からなる金属結合タンパク質

尿酸:
アンモニアの代謝物で電子供与性を持つ

ビリルビン:
赤色胆汁色素、胆赤素とも呼ばれ、血液、胆汁に含まれる化合物のひとつで胆汁成分の約0.5%を占めています。
ヘムタンパクのヘモグロビンの破壊産物として、脾臓、骨髄、網内織などで1日あたり0.5~2.0gのビリルビンが産生されます。
ビリルビンは腸管内でビタミンAや多価不飽和脂肪酸のリノール酸を安定化させその吸収を高める働きがあります。
ビリルビンが欠乏するとリノール酸やアラキドン酸が減少しコレステロールが増加し、過酸化脂質の生成が促進してしまいます。

エストロゲン:
性ホルモン、ステロイドホルモン
エストロゲンに冠動脈疾患予防効果が期待されています。
血管内皮細胞に作用しています。アテローム性動脈硬化の予防因子でもある、一酸化窒素の合成に影響を及ぼし、酵素活性が上昇します。

メラトニン:
メラトニンは小脳、網膜、腸管で生成され、視索上核の体内リズムを調節するとされています。
内因性の抗酸化物質もあるホルモンでもあり、その抗酸化能はビタミンCの2倍ともいわれています。
メラトニンは細胞膜の主成分である不飽和脂肪酸の酸化や細胞質内のフリーラジカルの生成を抑制し、ヒドロキシラジカルや脂質ペルオキシラジカルらのフリーラジカル、 また一重項酸素の消去にも効力があると言われています。
さらに細胞の核内にも入りフリーラジカルによるDNAの損傷を防ぐ作用もあります。
またDNAの分裂を引き起こす細菌毒度の作用も減弱させます。
しかしスーパーオキシドには効力があまり無いと言われています。

多価不飽和脂肪酸の過酸化

多価不飽和脂肪酸は脂質過酸化の対象となります。
様々な要因で酸化された不飽和脂肪酸化物は他の活性酸素分子種と一緒に、高い反応性があるため、活性酸素の中に加えられることが多くあります。
不飽和脂肪酸ラジカルは酸素分子と容易に結合し、脂肪酸ペルオキシラジカルとなり、次々とほかの不飽和脂肪酸を過酸化していきます。
例えば、作られた脂肪酸ヒドロペルオキシドは脂肪酸アルコキシラジカルにもなります。
これらのラジカルは細胞の膜を壊すと同時にDNA塩基の障害を起こし、タンパク質を酸化分解します。
脂肪酸酸化分解酸物はタンパク質と結合して加齢と共に増加するリポフスチン※を生成します。
リポタンパク質の一つであるLDL中の脂肪酸も酸化を受けるとマクロファージに取り込まれ動脈硬化の一因となります。
その他多くの臓器の障害を引き起こすといわれています。

※リポフスチン:細胞質内の不飽和脂肪酸の過酸化によりリソソーム内に形成される不溶性色素。リソソームによって細胞内消化された異物の残余物質であり、加齢性色素あるいは消耗性色素とも呼ばれる。

Wikipediaより抜粋

このように生じた脂質のラジカルを消去するため、自らラジカルと反応して連鎖反応を断つトコフェロール(ビタミンE)は脂質層において細胞膜やLDLの過酸化反応を防御する働きがあります。
カロチノイドも同様ですが、生体内での効果は濃度が低いために効果は少ないと言われています。
その他、生体内にはグルタチオンペルオキシターゼなど、内因性の多くの抗酸化機能があり、脂質過酸化を防御しています。
一方、脂肪酸ヒドロペルオキシドはホスポリパーゼによる分解を受けやすく、グルタチオンペルオキシターゼで還元されます。
膜中のリン脂質は直後のアシル基転移反応により修復可能となります。

糖化反応について

糖化反応はグルコースなどの還元糖とタンパク質の非酵素的な結合に基づく反応です。
糖化反応は還元糖のカルボニル基とタンパク質のアミノ基が、シッフ塩基をつくり、アマドリ変換を経て、
比較的安定なケトアミン(アマドリ化合物)を作る初期反応
反応性の高いデオキシグルコソンを生ずる中期反応
タンパク質に重合、褐色変化、蛍光物質の発生に特徴づけられるAGEを生成する好機反応
に区別されます。

糖化反応は非酵素的で、グルコース濃度に依存して起こるため、タンパク質の翻訳後修飾として生体の酵素タンパク質や構造タンパク質に様々な影響を与え、糖尿病の病態や老化現象に関わっていると考えられています。
糖尿病患者では糖化タンパクであるヘモグロビンA1cの測定が血糖コントロールの指標として利用されています。
糖化反応は健常人にも起こり、コラーゲン、レンズクリスタリンなど寿命の長いタンパク質に糖化反応生成物が蓄積して、白内障や結合組織の弾性の低下など、いわゆる老化現象の原因の一部を構成すると推測されています。

糖化反応と活性酸素

糖化反応が生体に活性酸素ストレスを与えることが明らかになっています。
活性酸素代謝の中心となるスーパーオキシドジスムターゼは糖化反応を受けて著しく活性が低下します。
生体内で発生する活性酸素種のほとんどがスーパーオキシド発生の原因となります。
糖化反応はSODの活性を低下させたり、SOD自身を破壊させる原因となるのに加え、糖化SOD自身が活性酸素発生源となることによって強い活性酸素ストレスをもたらすことになります。
糖化反応は高血糖状態で亢進し糖尿病合併症の病態に関与していると考えられています。
そのため、血糖を適正にコントロールすることは糖化反応の抑制につながります。

DNA障害と活性酸素

活性酸素は強いDNA障害活性があり、突然変異を誘起すると言われています。
活性酸素種の中でもヒドロキシラジカルは最も障害性が高いとされています。
生体高分子(核酸、タンパク質、脂質など)に対する障害が多くの慢性疾患(ガン、関節障害、動脈硬化症、老化など)に関与していると考えられています。
中でもDNAに対しては、一本鎖及び、二本鎖の切断、塩基の修飾、塩基間のクロスリンクなどを起こし、適切な修復がなされていない場合、細胞の障害、死や突然変異、そして細胞ガン化などに続くことになり、影響は大きいものです。

運動と活性酸素

運動は多くの酸素が取り入れられるため、各身体組織の酸素濃度は上昇し、安静状態の100倍に達する組織もあります。
一般に激しい運動によってもたらされるミトコンドリアへの酸素供給と電子伝達系の活発な反応により、フリーラジカルの増加、脂質過酸化、筋肉組織をはじめとする種々の組織細胞の障害がおこるといわれています。
近年トレーニングを積んだ人の血中にはトコフェロールや酸化防御酵素が、そうでない人に比べ、著しく増大していることが報告されています。
それほど、多くの活性酸素が生じているということです。

ミトコンドリアにはスーパーオキシドアニオンを過酸化水素に変換するスーパーオキシドジスムターゼが存在し、さらに過酸化水素はグルタチンペルオキシダーゼやカタラーゼにより分解され、無毒化されます。
グルタチオンペルオキシターゼは過酸化水素だけではなく過酸化脂質の分解消去にも機能しています。

激しい運動と活性酸素

急激な運動により、血中のSOD、クレアチンキナーゼ、および乳酸脱水素酵素などの活性が高くなることが知られています。
これは活性酸素により筋肉や肝臓の細胞やミトコンドリアが障害を受け、その中に存在する酵素が血液中に漏出した結果と言えます。
最高心拍数の75%に相当する強度の運動で12°の下り傾斜を30分間走行した後の血液中の酵素活性と過酸化物の濃度の変化は、下り傾斜の走行は上り傾斜よりも筋肉の損傷が大きいとされています。
また運動はヘモグロビンやミオグロビンなどの轍を含むタンパク質から鉄の遊離を促進することも知られており、この遊離鉄は脂質の過酸化などの反応を促進すると考えられています。
実際、遊離の鉄量に対応して尿中の過酸化物が増加することも確かめられています。

このような運動による過酸化脂質の増加はビタミンEなどの抗酸化剤の摂取によりある程度抑制されます。

適度な運動と活性酸素

適度な運動を繰り返しおこない、無理なく適応したトレーニングをすると、筋肉のミトコンドリアのSOD酵素量が増加し、その活性も上昇することが明らかにされています。
更に血中のグルタチオン量や赤血球中のグルタチオン還元酵素やグルタチオンSトランスフェラーゼの活性が上昇することも知られています。
このように適度なトレーニングや運動をすることにより、抗酸化酵素の誘導で、運動によって生じる活性酸素の消去に働くという生体活動があります。
特に酸素消費が増大する筋肉のミトコンドリアでは活性酸素消去系がトレーニングにより発達します。
つまり、適度なトレーニングは運動による過酸化脂質の生成を抑制する機能を高めます。
運動により高められる酸化ストレスを軽減する酵素系をうまく誘導して過酸化脂質の生成を高めないようなトレーニングメニューが重要となります。

紫外線と活性酸素

紫外線は日焼け、しわ、シミなどの皮膚老化、光線過敏症、ガン、白内障などの発症を招きますが、活性酸素が関わっています。
紫外線を浴びるとき、長波長の紫外線(UVA)は直接電離作用より、フラビン、NADPH、キノンなどの光増感物質を起こすことで、多くの活性酸素を生成します。
生体は活性酸化物による細胞障害を防御するために、皮内や皮下組織に抗酸化酵素や抗酸化物質を貯蔵しています。
しかし、激しい運動などにより酸化ストレスが急激に増大する場合、過度の紫外線を浴びる、栄養不良などがあると、それらの物質は活性酸素や局所の炎症などの作用で中和され減少します。
実際、カタラーゼ、 グルタチオンペルオキシターゼ 、スーパーオキシドジスムターゼなどの抗酸化酵素やユビキノール、ビタミンC、ビタミンEなどの抗酸化物質は紫外線の照射により速やかにに失活や変性が起こります。
カタラーゼの失活とビタミンCの酸化は活性酸素の働きを介さずに、直接の光増感作用によって引き起こされるため、少量の紫外線でも著しい変化が現れます。
ビタミンCは様々なフリーラジカル補足能を有するだけではなく、紫外線照射で生成した酸化型ビタミンEを還元型に再生したり、コラーゲン形成を促進するなど、紫外線障害や皮膚の老化防止にとって重要な働きを担っています。
ですが、高い親水性と不安定性のため欠乏しやすく、外部から経皮的(外ケア)に補給することも難しいものです。
皮膚組織ではビタミンCがビタミンEとジヒドロリポ酸と連鎖した再正反応系を形づくっているので、脂溶性のビタミンEとジヒドロリポ酸を補給することにより還元型ビタミンCを再生しながら抗酸化能を維持することができます。
ビタミンEの還元にビタミンCが働き、ビタミンCの還元にジヒドロリポ酸が働きます。

皮膚における紫外線防御機能としては、その他に角層の働きが重要です。
角層は角質細胞が重層したもので表皮の最外層にあり、ケラチン、システイン、リン脂質などを含みます。
この角層は反射、散乱、呼吸という物理的作用によって生体を紫外線の障害から防御しています。
また、表皮に存在するメラニンはメラノサイトの中でチロシンの酸化によって生成され、紫外線が照射されるとその産生が高まり、角化細胞へと移行します。
メラニンは紫外線をよく吸収するだけではなく、それ自身も抗酸化能を示し、紫外線によって発生する活性酸素障害を防いでいます。

脳と活性酸素

脳の酸素消費量は生体全体の約20%を占めており、通常の酸素消費量の4~5%が活性酸素の生成に利用されます。
運動中は脳の酸素消費量も増加するので、活性酸素の生成による酸化ストレスが増加すると考えられています。
運動は脳への血流量と酸素消費量を増加させ、活性酸素の生成を促進すると考えられています。
しかしトレーニングでは過剰な活性酸素の生成に適応するための抗酸化防御機構が亢進することが予想されます。

最後に

活性酸素や抗酸化物質を科学的にメカニズムを説明させていただきました。
更に、糖化、運動、紫外線などと活性酸素についても説明しました。
こういったメカニズムを理解すると、日々生活しているだけで、息をしているだけで、多くの活性酸素を生み出し、体内の抗酸化酵素や摂取した抗酸化物質が速やかに対応して消去してくれていることがわかります。
このバランスが崩れると、しわやシミなど肌老化が起こったり、疾病リスクが上がります。

抗酸化作用のある、ビタミンやポリフェノールは野菜や果物に多く含まれています。
そういった食品を積極的に摂ることは常に心掛けて、健康や美容に活用していただければと思います。

参考文献
身体運動・栄養・健康の生命科学「活性酸素と運動」
参考論文
活性酸素,過酸化脂質,フリーラジカルの生成と消去機構 並びにそれらの生物学的作用 https://yakushi.pharm.or.jp/full_text/122_3/PDF/203.pdf

このページを読んでいる人はこちらも読んでいます
炎症について最もわかりやすい解説
代謝とは 身体のしくみ