正しい食品保存術|食品の鮮度を保つ方法

おはよう朝日です 食品保存術

食品の保存を一工夫することで鮮度が長持ちして、美味しく無駄なく食べることができます。野菜、肉、魚の食品保存術について解説しています。

朝日放送テレビ「おはよう朝日です」で食品保存術を紹介

池上淳子(管理栄養士、美容食インストラクター)

管理栄養士池上淳子

もやしの食品保存術「冷蔵保存」

もやしは、保存容器に移し、たっぷり水を入れて2日に1回水を入れ替える。本来もやしは水の中で発芽するため、その状態に近づけておくことで長持ちする。 保存期間:1週間

もやしの保存方法

もやしの栄養

アスパラギン酸というアミノ酸は、アスパラガスに含まれていることで有名ですが、疲労回復や代謝の活性化などの効果があります。緑豆もやしにはアスパラガスとほぼ同量、大豆もやしには、約2倍含まれている。(カルボン酸を2つ、アミノ基を1つ持つので極性が高く、また水と水素結合をとることができるのでよく溶ける)

アスパラギン酸
大豆もやし 890㎎
緑豆もやし 460㎎
アスパラガス 430㎎

そのほか、ビタミン類なども含まれてはいるが、その量は多くない。また水溶性ビタミンに関しては、水に漬けることで流出するため、この保存法では減少される可能性が高いが、カットしていない野菜は細胞壁で栄養素が守られている為、流出は少ないと示唆される。

もやしに多いアスパラギン酸、水に浸けても落ちない??

アスパラギン酸は水溶性の為、溶け出す可能性は高いですが、溶け出すには、野菜をカットしたところなどから流出することが多いです。もやしの場合、細胞壁で守られている為、流出は少ない可能性があります。しかし、明確な数値がでているようなものではなく、あくまでも想定の範囲です。

野菜を水につけることでなぜシャキシャキになるの?

もやしの保存方法

野菜はたくさんの水分でできています。そのままの状態や、カットした野菜をそのままにしておくと切り口から水分が蒸発するため、しなしなで歯切れが悪くなります。生の野菜の細胞には、糖や有機酸など様々な成分が含まれています。水につけると浸透圧の作用で、水と細胞の間に同じ圧力になろうとする力が働き、濃度の高い野菜の細胞の方へと水が入り込もうとします。結果、野菜の細胞がピンと張り膨らむため、食感がパリッとして歯切れがよくなります。

また水に漬けておくことで、空気に触れあうことがなく、酸化による変色や風味が落ちるなどを防ぐことができます。しかし、野菜の中に含まれるビタミンには水に溶け出してしまうものもあるので、長時間水に漬けておくことは注意が必要です。

豆苗の食品保存術「冷蔵保存」

豆苗を根元から切って、水洗いする。保存容器に入れ、水をひたひたに注いでふたを閉じて、冷蔵室か野菜室に保存する。チルド室はNG。3日おきに水を取り替える。 保存期間:7~10日間

豆苗の栄養

βカロテン:3100㎍
ビタミンE:1.6㎎
ビタミンC:43㎎
βカロテンとビタミンEは脂溶性ビタミンの為、水に漬けておいても問題ないが、ビタミンCは水溶性の為、カット部から流出して減少する。

みょうがの食品保存術「冷蔵保存」

冷蔵保存2種類。 10日間保存。洗った後、ぬらしたペーパータオルで包み、保存袋に入れて口を閉じ、冷蔵庫の野菜室で保存。ペーパータオルは2~3日に1回取り替える。見た目変わらず、味、香り、シャキシャキした食感も同じ。

1ヵ月保存
保存容器にみょうがを入れ、ひたるくらいの水を入れて浸ける。容器のふたを閉め、冷蔵庫の野菜室に保存する。2、3日に1度を目安に水を取り替える。みょうがが水分を含むため、少しやわらかくなり、香りも少し抜けるが、味はキープされる。

みょうがの栄養

みょうがの香りはファイトケミカルのαピネン(アルファピネン)とカンフェンによるもの。涼感のある辛味成分はミョウガジアール。その香りや辛みにより薬味として好まれて使用されている。また95%が水分の為、シャキシャキとした食感がある。栄養価は低いものである。

アルファピネン:
食欲増進、脳を刺激するので、眠気覚まし、発汗作用、解毒作用、ホルモンバランスの調整作用も期待できる。
カンフェン:
抗炎症作用や抗菌作用を含んでいるため、口内炎予防やのどの痛み、解毒作用、熱による身体の不調を整える、風邪予防に役立つなどの効能を持つと言われている。

みょうがの香り成分などが水に流出して減少する可能性がある為、保存は水に漬けるのではなく、ぬれたキッチンペーパー+保存袋の方がおすすめ。

みょうがの物忘れ話

釈迦の弟子の一人は物忘れがひどく、自分の名前さえ忘れてしまいます。そのため、首から名札を下げていましたが、それすらも忘れてしまうほどでした。彼の死後、お墓に行ってみると、みょうががたくさん生えていました。このことから『みょうがを食べると忘れっぽくなる』という話があるそうです。

水菜の食品保存術「冷蔵保存」

水菜の保存方法

水菜を、洗ってから1分ほど水に浸し、食べやすい長さに切り、ぬらしたキッチンペーパーに包み、保存袋に入れて野菜室で保存。 保存期間:1週間

水菜の保存方法

水菜の栄養

カルシウム:210㎎
鉄:2.1㎎
βカロテン:1300㎍
ビタミンC:55g
この保存方法であれば、水溶性ビタミンなどの流出が防げるため◎

大葉の食品保存術「冷蔵保存」

ぬれたキッチンペッパーに包みラップをして袋に入れて冷蔵庫に保存。 保存期間:1~2週間

大葉の栄養

カルシウム:230㎎
鉄:1.7㎎
亜鉛:1.3㎎
βカロテン:11000㎍
ビタミンE:3.9㎎

肉や魚の冷凍保存について

肉の保存方法

家庭用の冷凍庫内は、大体-18℃程度に保たれている。この温度では、酵素や微生物が活動を停止するため、食材の劣化が起きにくく、栄養価が失われるにくい。冷凍することで、酵素や微生物などの内側からの劣化は防ぐことができるが、冷凍保存も万能ではなく、今度は外側から、酸化と乾燥が進行してくる。肉や魚を冷凍するときに、水分残っていたり、空気に触れている面があったりすると、そこから酸化や乾燥が進行し、酸化した食材は、白っぽくなり、著しく味が落ちる。乾燥した食材は、解凍してもどこかパサついた食感が残ってしまう。その為、ポイントを抑えて、美味しく保存しましょう。

肉の食品保存術「冷凍保存」

買ってきた「パック」のまま冷凍はNG。ドリップが出ている可能性が高い。ドリップとは、肉の内部から出てくる赤い血のような液体で、肉から染み出た水分、たんぱく質、うま味成分が含まれていて臭みの原因になるため、冷凍前に取り除く必要がある。購入時にはドリップが出ていなくても、持ち帰る間の温度変化で出てしまう場合もある。

また、肉が入っているパックは冷凍時に断熱材の代わりになって温度が伝わりにくくなり、冷凍に時間がかかる原因にもなるため、パックのまま冷凍するのはおすすめしません。肉の下に敷かれていることの多い「ドリップ吸収シート」もそのまま冷凍すると不衛生です。シートを取り除き、肉についたドリップはペーパータオルで拭き取ってから冷凍をしましょう。購入時にすでにドリップが多く出ている肉は、冷凍・解凍後のものの可能性があります。解凍後の肉の再冷凍は美味しさの点からも、衛生面でも避けることをおすすめします。

肉の保存期間

1ヵ月、ひき肉は2週間

肉の保存方法

肉を直接手で触れないようにラップで包む。触ったところから細菌が発生し、傷む原因になるため、出来るだけ触れないようにする。熱伝導率が高く急速に冷凍できるアルミホイルで肉を巻いて冷凍(冷凍庫の開け閉めが無ければ、アルミホイルをしてもしなくても、凍るスピードはさほど変わらない)。 凍ったら、食品保存袋に移し替えて冷蔵。アルミホイル以外の方法は「急速冷凍室」へ入れる。金属製トレイの上にラップ、保存袋に入れた肉を乗せて冷凍する方法もある。金属は熱の伝導率が高いため、冷凍室の冷気が食材に伝わりやすくなり、冷凍にかかる時間が短くなる。

肉の保存方法

なぜ急速で冷凍することが良いのか

冷凍品を解凍すると赤い肉汁(ドリップ)が出るが、これはゆっくり凍らせてしまった為に肉の内部の水分が大きな結晶をつくってしまい、細胞壁を壊してしまっているから。結果的に、食べた時ボソボソしたような食感になってしまう為、ジューシーで美味しいお肉を食べる為に急速冷凍が必要になる。

厚切り肉、ステーキ肉、ブロック肉のぞれぞれの保存法

塊肉
水分を拭き、ラップでピッタリ包んだらアルミホイルで包み、凍結させてから保存袋にまとめる。
薄切り肉、鶏胸肉、鶏もも肉
下味をつけてから保存袋に入れる方法もある。解凍後にすぐ調理できる。
ひき肉
保存袋に平らに入れて、菜箸などで筋をつけてから冷凍すると、使う時に筋のところで折って使う分だけ取り出せる。

冷凍焼けとは

冷凍焼けは、食材を長い間冷凍保存した際などに起こる現象です。密封せずに冷凍したり、冷凍⇒解凍⇒再冷凍を繰り返したりすることでも、冷凍焼けが生じる場合があります。食べられないことはありませんが味は確実に落ちるため、冷凍焼けしないよう密閉保存し、早めに食べきるのがおすすめ。

美味しく解凍する方法「流水解凍」

肉の美味しさをキープしながら、実践しやすい解凍方法は2つ。1つめは「流水解凍」です。肉が入った保存袋を流水に当てて解凍します。2つめは「冷蔵庫解凍」冷凍肉を冷蔵庫に移動して解凍します。「電子レンジ解凍」は、加熱ムラが起きやすく、上手に解凍するコツをつかむまでは難しいものです。冷凍庫から出して常温で解凍する「常温解凍」は、解凍していることを忘れて放置してしまうと、雑菌が繁殖しやすい状態に長時間さらされることになります。

再冷凍はしてもOKか

一度解凍した肉は、冷蔵庫で保存するのも、再度冷凍庫に入れるのもNGです。冷凍焼けの原因になり、衛生的にもおすすめできません。解凍後は調理して肉の中心部まで火を入れ、その日のうちに使い切るようにしましょう。

魚の食品保存術「冷凍保存」

魚の保存方法

一尾魚
丸ごと1尾の魚の場合は内蔵から傷み始めるため、エラ、内蔵、ウロコは冷凍前に取り除く。内臓などを取り、流水で洗ったら、お腹の中まで水分を拭き、1尾ずつラップで包んで保存袋に入れ、空気を抜いて閉じたら、チルド室で保存する。冷凍する時は、冷蔵と同じ要領で下処理後、使いやすい大きさに切って保存袋に入れる。

切り身
水分をしっかりふき取り、1切れずつラップに包んで保存袋に入れ、冷凍庫へ。塩をふってしばらく置き、水分を拭きとると身が引き締まる。さらに、においを防ぐために酒もふって水分を拭き取ってから1切れずつラップで包んで保存袋に入れ冷凍庫へ。 ※塩や酒は無しでもOK

魚の保存方法

保存期間:2週間

肉と同じく、急速冷凍を心がける

魚に厚みがあると冷気が伝わりにくいため、保存袋に入れる際はできるだけ薄くする。冷凍庫に入れるときは、「急速冷凍室」へ入れる。急冷機能がない場合は、金属製のトレイの上にのせるか、アルミホイルに包んで冷凍庫に入れる。金属は熱の伝導率が高いため、冷凍にかかる時間が短くなる。 (冷凍庫の開け閉めが無ければ、アルミホイルをしてもしなくても、凍るスピードはさほど変わらない)

解凍方法

☆流水解凍
ボウルに冷凍した魚を保存袋ごと入れ、流水にあてる。触ってみて、中心がまだかたい状態が半解凍状態の目安。完全に解凍したい場合は、触ってやわらかくなるまで水にあてましょう。

☆冷蔵庫解凍
冷凍した魚を保存袋ごと、冷凍庫から冷蔵庫に移すだけ。時間に余裕のあるときにはおすすめの方法。魚の厚みや種類などによって差はあるが、使うタイミングの3~4時間くらい前に冷蔵庫に移して解凍すると半解凍状態に。6時間以上おくと完全に解凍される。

☆氷水解凍
氷水に保存袋ごと魚を入れ、随時氷を足して冷たさをキープしながら時間をかけて解凍する方法。時間がかかるが、鮮度がキープされやすいため、ドリップも出にくくなる。

おススメしない解凍法
電子レンジ解凍

電子レンジの解凍モードで解凍する方法は慣れないうちは加熱ムラを起こしやすいので注意が必要。
常温解凍
冷凍した魚を常温におく方法、解凍したことを忘れてしまって放置すると、細菌が繁殖しやすい温度帯に長時間さらされることになるため、お勧めできない。

冷凍保存した豚肉をそのまま使用した「ミルフィーユカツ」

ミルフィーユカツ

材料 2人分
豚肉ローススライス 14枚ほど 240g
小麦粉、卵、パン粉、揚げ油 塩コショウ適量
とんかつソース

肉の保存方法

作り方
1買ってきたパックの並び方のまま、水気を拭きとって、7枚ほどずつラップで包む。
2アルミホイルに1をくるむか、金属製トレイにのせて、冷凍室へ、固まったら、保存袋に入れて冷凍室に保存。
3冷凍庫から取り出し、凍ったまま、衣をつけて油で揚げる。(卵と小麦粉は混ぜてバッター液にする)    

バッター液 (ミルフィーユカツ2~3個分)
薄力粉 大さじ4
卵 1個
水 大さじ1

ミルフィーユカツ

冷凍ステーキ肉をそのまま焼いた場合

参考サイト:冷凍したお肉を美味しく焼く
https://gigazine.net/news/20140813-cooking-frozen-steaks/

焼く時間は冷凍したまま焼いた方が長いが、両面焼き色がついたころに、良い感じでミディアムレアになっていて、肉の味が顕著に美味しかった。解凍してから焼いた方は、肉が固くなり、水分も抜けてパサつき感があった。
   

おはよう朝日です 食品保存術

いかがでしたか?冷蔵、冷凍保存を上手に活用すると、鮮度をキープして、美味しく食べることができます。
ひと手間加えて、美味しい食卓を♪また手抜きできるところは手抜きして、料理を楽しみながら、健康で元気な毎日を過ごしてください。