美肌をつくる「ビタミンC」について美容栄養のプロが解説

美肌をつくる食事

著者:池上淳子
管理栄養士/美容食インストラクター
管理栄養士 池上淳子

ビタミンCとは

ビタミンとは、5大栄養素のひとつで、全部で13種類あります。ビタミンCはその中のひとつ、「ビタミンと言えばビタミンC」が連想されるくらい、とっても有名なビタミンです。ビタミンは大切な栄養素ですが、ビタミンそのものがエネルギーになったり、体を構成する成分になるものではありません。3大栄養素である糖質、タンパク質、脂質の代謝を助け、エネルギー生成や体をつくる為に助けてくれる成分です。その為、毎日必ず摂らないといけない必須栄養素になります。

美肌をつくるビタミンC

ビタミンCの美肌効果

ビタミンCは美肌づくりに大切なビタミンです。では具体的にどのような美肌効果があるのか、みていきましょう

コラーゲンづくりで弾力美肌

美肌をつくるビタミンC

肌の深いところに多くのコラーゲンが存在しています。コラーゲンは弾性繊維で肌の弾力やハリに関わります。コラーゲンが豊富で、網目構造をキチンと作っている肌は弾力性があってハリがあり、弾けるような美しい肌であると言えます。ビタミンCはそんな美肌に大切なコラーゲンの合成に関わっています。

コラーゲンはアミノ酸であるアラニン、グリシン、プロリンの3つで構成されています。その中のプロリンが体内でヒドロキシル化(水酸化)を受けて、ヒドロキシプロリンに変化します。このヒドロキシプロリンによって、コラーゲンの構造が安定化されていると考えられています。※水素結合によりタンパク質鎖どうしが結び付き、コラーゲンの3重螺旋構造を保つ働きがある。

この反応の時にビタミンCが必要な為、健康なコラーゲン生成、肌生成にビタミンCは必須です。ビタミンC不足の食事が続くと、正常なコラーゲンが作られなくなります。

酸化を抑制して艶やか美肌

美肌をつくるビタミンC

肌に紫外線が照射されることで体内の活性酸素が活性化されます。すると、細胞が酸化し、肌ではシミやしわの原因となってしまいます。ビタミンCは、水溶性ビタミンで強い還元能力があり、スーパーオキシド(O2−)、 過酸化水素(H2O2) 、ヒドロキシラジカル(・OH)などの活性酸素類を消去する働きを持ちます。またビタミンCは、ビタミンEの再生機能があります。ビタミンEは、体内の脂質の抗酸化作用があり、活性酸素を消失させることにより自らが酸化されます。ビタミンCは、酸化されたビタミンEを再生させます。このように、ビタミンCは体内での抗酸化作用を発揮し、美肌づくりや疾病予防など美容・健康に大きく貢献します。

シミを薄くする効果で美白

美肌をつくる食事

シミの原因はメラニンが肌に定着することで起こります。シミに効く栄養素の代表格がビタミンCです。ビタミンCは黒色メラニンの生成を抑制する働きがあります。また、酸化して濃くなった黒色メラニンを元に戻す(還元)作用も認められています。 体の中から、体の外から、どちらもビタミンCは有効といえます。シミの予防と、できてしまったシミを戻す働きと両方にビタミンCは働きますので、美しい白肌に必須といえます。

ビタミンCの摂取量

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」では、広い摂取範囲でも安全だと考えられるため、上限量は設定していませんが、通常の食品から摂取することを基本としています。 健康な成人であれば 1日に2000mgの摂取量までは、毒性はないと言われています。水溶性ビタミンのビタミンCは、一度に多く摂りすぎて体内で吸収されなかった分は尿中に排出されます。一度に数グラムレベルで摂ると、腸管耐容量を超えて下痢を起こす可能性がありますので注意が必要です。

摂取したビタミンCは消化管から吸収されて速やかに血中へ送られます。摂取形態は食事、サプリメント共に生体利用率に差異は無く、吸収率は200㎎/日程度までは90%と高く、1000mg/日以上になると50%以下となると言われています。日本人の1日に必要なエネルギーや栄養素量を示した「日本人の食事摂取基準」によると、ビタミンCの必要量は一般成人で1日100mgです。因みに壊血病は6~12mg/日、摂取していれば発症しないとされています。

参考:厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』ビタミンC
https://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/c03/09.html

ビタミンCとレモン

ビタミンCと言えば「レモン」を連想される方が少ないないでしょう。レモンを筆頭とした柑橘類からビタミンCの発見があったため※1、そのように連想されるようになっています。実際市販されているビタミンCのサプリメントの錠剤は黄色であることが多いですが、それはビタミンCのイメージに合わせて加工されているからです。

美肌をつくるレモン

※1
ビタミンCの歴史
その昔、大航海時代に船乗りたちが歯茎から出血、やせ衰え、遂に死に至るという原因不明の恐ろしい病気が蔓延しました。その病気は「壊血病」というものです。1498年、アフリカ最南端の喜望峰を船で回り、ヨーロッパ人として初めて、インドへ到達したバスコ・ダ・ガマですが、成功の裏には大きな犠牲がありました。ポルトガルーインドを往復する航海の最中、160人程の乗組員のうち、100人近くが壊血病で亡くなり非常に恐れられていました。18世紀半ば頃、イギリス海軍で船医をしていたジェームズ・リンドが乗り込んでいた船でも、多くの壊血病の犠牲者がいました。リンドは悩んでいましたが、やがて同じ船の乗組員でも壊血病に罹患する人と罹患しない人がいることに気づき、食事との関係があるのではないかと考えるようになりました。そこで乗組員を2つのグループに分けて、違う内容の食事を一定期間食べる実験を始めました。

すると、ある食材を食べていたグループに壊血病が発生していないことに気づきます。その食材こそ、レモンやライムといった柑橘類だったのです。イギリス海軍は柑橘類を積極的に食べるよう、乗組員に呼びかけ、その結果壊血病が劇的に減少しました。1910年代、ヨーロッパでヒトの体内で不足すると疾病につながる成分としてビタミンが定義づけられ、1928年ハンガリーの生物学者ジェルジが柑橘類やジャガイモに含まれているビタミンCを発見することになります。

ビタミンCと大航海時代

レモン〇〇個分のビタミンC表記について

とある質問
ジュースやお菓子によくある表記で「レモン〇〇個分」とあります。様々な種類がありますが、中にはレモン50個分などといったものも・・・。そもそも、1日にレモン50個分を摂取しても大丈夫なものなのでしょうか?

レモン果実に含まれているビタミンC量は100㎎/100g中、レモン果汁では50㎎/100g中、になっています。全国清涼飲料水協会では、製品のビタミンC添加量を消費者にわかりやすく表現するために、「レモン○○個分のビタミンC含有」等のレモン果実の個数により表示を行っています。これらは、レモン果実1個当たりのビタミンC量として「20mg」を基準として採用しています。その為、レモン50個分であれば、1000㎎のビタミンCが含有されていることになります。成人男女共に、1日の推奨量は100㎎です。レモン50個分:1000㎎のビタミンC量はその10倍の量になります。

参考:「レモン果実1個当たりのビタミンC量」の表示に関する件 —社団法人全国清涼飲料工業会
http://www.j-sda.or.jp/images_j/pdf/lemon.pdf

様々な研究結果がありますがその一部として上記にある通り、1000㎎摂ったとしても50%しか利用できないと言われています。また、水溶性ビタミンの為、摂り過ぎた分は尿へ排泄されます。その為、過剰に摂ったとしても余分量は排泄されるので、過剰症の心配は基本的には無いと言われています。ただ、個人差がありビタミンCの摂り過ぎで下痢症状を起こす人もいます。また、吸収が早いですが排泄も早いので、一度に大量に摂ると、排泄量が増えるだけの為、1日の中で分けて摂ることが推奨されています。対象が「レモン50個分のビタミンC含有のドリンク」だとしたら、恐らく分けて飲むのではなく、一気に飲み干す可能性が高いので、その殆どは排泄される可能性が高まります。1000㎎のビタミンC量については、食事摂取基準からみると相当量になりますが、サプリメントで考えると、極一般的な量になります。メーカーにより異なりますが、1日に摂れるビタミンC量が1000~2000㎎で表記されているものが殆どです。

「レモン50個摂取して大丈夫なものか」
⇒ビタミンCには上限量がなく、過剰症が無い為、基本的には大丈夫。但し個人差で下痢を起こす場合がある。レモン50個ときくとすごい量だが、通常サプリメントで1日に摂る一般的な量の為、驚くような量ではない。しかし、1000㎎摂っても全て体で利用されることはなく、排泄量が増える可能性が高い。ドリンクで一気に1000㎎摂った場合は殆ど排泄される可能性がある。

ビタミンCが多く含まれている食品

基本的に野菜や果物に多く含まれています。野菜では、パプリカ、ピーマン、かぼちゃ、キャベツ、じゃがいも、さつまいも、ブロッコリーなどが比較的に多く含まれている食品になります。ただ、ビタミンCは調理によって失われる場合も多くあります。加熱により損失もありますが、一番多い損失は水に溶けだすことです。そのため、茹でたり、水に晒すことでどんどんビタミンCは溶けだしていってしまうので、短時間で調理することをお勧めします。果物は基本的に生でそのまま摂ることがほとんどなので、ビタミンC摂取としてはおすすめの食べ方です。柑橘類、いちご、キウイなどが多く含まれています。

美肌をつくるキウイ

参考:食品中ビタミンの調理損耗に関するレビュー
https://www.jstage.jst.go.jp/article/vso/91/2/91_87/_pdf/-char/ja

最後に

ビタミンCについていかがでしたか?ここでご紹介したのは特に美肌についてでしたが、健康効果であれば、免疫力を上げたり、風邪予防、ストレスの軽減など、様々な良い効果が多くあります。水溶性の為、体にため込むことができません。3食の食事やおやつで果物を摂るなど、こまめに摂りビタミンCたっぷり生活を心がけて、美容に健康に役立ててください。

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