うんざりする、健康・栄養情報|成分信仰やめませんか?

ネット栄養情報

著者:池上淳子
管理栄養士/美容食インストラクター
日本ビューティーヘルス協会 会長
池上淳子 キャスト出演

はじめに

毎日テレビ、ネット、動画配信、SNS、雑誌などあらゆるところで、健康や栄養の情報が溢れています。視聴者は本当に正しい情報なのか、判断することがとても難しく、誰を信じればよいのかわからないという意見もよく聞きます。

ネット情報

研究者、医師、栄養士などの専門家が情報を提供している訳ですが、健康、栄養情報は実際、効果が期待できないものも多くあります。

私は様々なテレビ番組や雑誌などの栄養監修を行っています。専門家であるからこそ、とても責任があることだと思っています。だからこそ、本当に人にとって有益なのか、そこを360度あらゆる視点から紐解き、科学的根拠を元に有益な情報提供に努めています。

実験研究と疫学研究 

・実験研究は『なぜ』メカニズムを解くこと

・疫学研究は『どれくらい』量を決めること

どちらも大切ですが、それぞれ質が違います。実験研究はその成分がどのような効果があるかを解くことです。主に動物実験で示される場合が多いです。疫学研究はある成分がどのくらいの量で有益であるか、効果が期待できるかを示すことです。

研究

「機能」と「効果」の違い

機能は働きであり理由である
効果は効き目であり量である

機能、成分はあっても効果は期待出来ないものが多くあります。その為、気をつけないといけないのは、成分信仰ではなく、食品や食生活全般に注目するべきです。

例えば、成分にばかり気を取られてしまうと、「果物は糖質が多くて太る」と言われ、「糖質が多い=血糖値が上がる」と懸念されます。しかし果物を食品全体で見たときの栄養効果は素晴らしく、水溶性食物繊維量も豊富です。水溶性食物繊維の働きは急激な血統上昇を抑制します。実際、糖尿病患者が果物を食べたほうが血糖値が安定しやすいという報告もあります。

関連・参考ページ
糖尿病は果物を食べるべき?

果物 いちご

食品を一面のみで見ることの危険性

「にんじんは糖質が多い 」ではなくにんじん全体の栄養を考えることが必要です。にんじんには免疫力や美肌に関わるβ-カロテン量が非常に多く、抗酸化作用もあり老化や疾病予防にも役立ちます。

もっと言うと、食事全体のバランスが大切です。恐ろしいのは、成分に気を取られ過ぎると、その成分さえ摂れば健康やダイエットが実現できると思い、手っ取り早く摂取できる健康食品やサプリメントに走りがちになります。そしてその成分さえ摂れば良いと思い、食事が疎かになりやすくなります。

にんじん

成分信仰の危険性

サプリメント

例)味噌のタンパク質

大豆には中性脂肪低減効果が期待できるという報告があります。

参考論文
大豆とその調理加工が脂質代謝改善作用に 及ぼす影響 https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/iii-takahashi.pdf

あるテレビ番組の制作スタッフからの質問。「大豆タンパク質には痩せる効果があるんですよね?味噌汁を食べると痩せるって言って良いですか?」

・・・良い訳ないです。

味噌に含まれるタンパク質量は、1.6gしかなく微量です(味噌汁1杯大さじ1弱の味噌15g)肉100gに含まれるタンパク質は部位により異なるが約20gです。ということは肉に比べて味噌汁のタンパク質は1/10以下となります。そんな微量で「中性脂肪を減らす効果」が得られるとは決して言うべきことではありません。

味噌汁

成人男性 1日のタンパク質推奨量 60g
成人女性 1日のタンパク質推奨量50g
日本人の食事摂取基準2020 厚生労働省

例)海苔の食物繊維

この間テレビを観ていた時、よくテレビに出ている有名な医師が「ご飯の上に海苔をふりかけると食物繊維が摂れます。食物繊維は腸内環境を整えて、免疫力を上げて強い身体づくりをしてくれます。」と言ってました。

・・・おぞましいと感じた。

映像にはご飯にきざみ海苔をパラパラかけている様子がありました。その海苔の量、恐らく1gも無いと思われます。0.2gくらいでしょうね。そんな微量で腸内環境を整えたり免疫力を上げたりする効果が期待できるわけありません。

きざみ海苔

成人男性 1日の食物繊維目標量 20g以上
成人女性 1日の食物繊維目標量 18g以上
日本人の食事摂取基準2020 厚生労働省

「その成分にその効果があるか?」と問われると、答えは「ある」で正しいですが、身体にとって有益な効果が得られるだけの量を摂っているかというと「摂れていない」という場合が多くあります。

例) タンパク質が肉より多いスーパーフード

美容食として人気が根強いスーパーフード。例えばヘンプシード(麻の実) は肉のタンパク質より多いと言われています。

ヘンプシード

タンパク質量
ヘンプシード100gあたり29g
牛肉サーロイン100gあたり16.5g
卵1個(50g)あたり6.1g


日本食品標準成分表 文部科学省
ヘンプシード参考サイト
https://www.rakuten.ne.jp/gold/uzumasa/share/hemp/index2.html

あるモデルの女性が朝食に摂っていたヘンプシード。タンパク質が足りていないことを伝えると、「タンパク質の多いヘンプシードを食べているんですよ。お肉より多いんです」と言われました。

「どれくらい食べているんですか?」と聞いたところ、「ティースプーン1杯程度です。」

・・・それでタンパク質が摂れていると思ってる?

食物の中にタンパク質が多いとか、ビタミンが多いとか色々ありますが、何を持って「多い」「少ない」を言っているのかというと、100g中どのくらい入っているか で比較されます。

上記にあるように、100g中の量で比較するとヘンプシードはタンパク質が多いかもしれません。けれど実際はティースプーン1杯程度しか食べていません。つまりおよそ2gほどしか食べていないことになります。つまり0.5g程度しかタンパク質が取れていないことになります。

それなら、ゆで卵を1つ食べたほうが余程健康的で、美肌にも効果的です。

最後に

私自身もつい成分で話しがちになる為、十分気をつけないといけないと思っています。食品には多くの栄養素が混ざり合って存在しています。ひとつの成分だけで成り立っている食品はありません。

そして食品と食品を組み合わせていき、調理によって味が美味しく豊かな食卓が実現できます。そして美味しさだけではなく、様々な栄養素が混ざり合うことになり、消化や吸収にも良い相乗効果が出て、健康に良い影響を及ぼしてくれます。

バランスの良い食事

一部だけを切り取って考えることはせず、全体を考えて健康、栄養を語る必要があり、自分自身もあらゆる面から本質を読み解く管理栄養士でありたいと思い、これからも邁進していきたいと思います。