栄養とは 三大栄養素をわかりやすく解説

三大栄養素

記事:池上淳子 管理栄養士/美容食インストラクター
池上淳子

栄養の定義とは

自然界から摂取したいろいろな物質を消化・吸収によって体内に摂り込み、分解(異化作用)や合成(同化作用)によって、成長や生命活動に必要な人体特有の成分に変換させることです。

食品は様々な種類があり、その中には多くの栄養素等が含まれています。例えば、肉や魚に含まれているタンパク質は、私たちの体を構成する材料となるものです。けれど、食べた肉や魚が私たちの体にそのまま使われるものではありません。

口の中で細かく咀嚼→胃に入って、少し分解→小腸にいって、もっと分解
そうやって、小さく分解されたタンパク質が腸膜から吸収されて、体内で、私たちの体特有のタンパク質へ作り替えられていきます。

肉を食べる女性
肉を食べても体内で分解されて吸収される

体内に入った食べ物は、分解されます。それを消化と言います。例えば、ご飯やパンなどの炭水化物はデンプンです。デンプンはブドウ糖がたくさん繋がっている構造をしており、その繋がっているところをぷつぷつと切る作業が消化です。消化されたものは主に小腸で吸収されて、肝臓に向かい、血液に入って、各臓器に運ばれ、エネルギー等に使われていきます。

また肉や魚に多いタンパク質であれば、タンパク質はアミノ酸がたくさん繋がっている構造をしています。その繋がりをぷつぷつ切って、最小のアミノ酸になります。アミノ酸は吸収されて、体の臓器や骨など体特有のタンパク質に組み替えられます。そういった作業が常に体内では行われています。

栄養素とは

体内での栄養(代謝)のために、外界から摂取される要素のことです。

よく私たちは「栄養を摂る」という言い方をしますが、正しくは「栄養素を摂る」となります。栄養素には5大栄養素と言われる

糖質(炭水化物)
タンパク質
脂質
ビタミン
ミネラル


があります。

管理栄養士
体をつくる5大栄養素

栄養はなぜ必要か

私たちは、毎日3食の食事を摂ります。食事を摂る大きな目的の一つは、生きていく為に必要な栄養素を体内に取り入れることです。体は約37兆個の細胞の集合体で、その細胞は常に生まれ変わっています。古くなった細胞は死んでいき、排泄されます。そして新しい細胞が新しく生まれます。その細胞を作る材料が栄養素であり、食べ物です。

健康な女性

3大栄養素とは(カロリーとは)

身体に必須の成分の栄養素の中で、

炭水化物(糖質)
タンパク質
脂質


の総称を三大栄養素と言われています。他にビタミンやミネラル、食物繊維などが有る中で、特に人間の身体になくてはならない栄養素で重要なものとされている炭水化物・タンパク質・脂質を3大栄養素と呼んでいます。炭水化物はエネルギー源、タンパク質はエネルギー源+体の構成成分、脂質はエネルギー源+体の構成成分というざっくりとした役割があります。

この3つに共通している事は、どれもエネルギー源になるという事です。エネルギーの単位をcal=カロリーと言います。カロリーのあるものは3大栄養素しかありません。(より詳細にみると食物繊維もエネルギーが生み出される)三大栄養素はエネルギー産生栄養素と呼ばれています。

エネルギーは車のガソリンのようなもので、無くなったら人間の機能は全て失います。呼吸をする、歩く、喋るetc、全ての動きにはエネルギーが必要です。そして常に必要です。

カロリーをダイエットの敵のように捉えられたりしますが、あくまでのカロリー過多が良くない事であり、カロリーは必要なものです。摂り過ぎたカロリーは、エネルギ―過多になり、使われる事ができず、中性脂肪に変換され、体に蓄積されます。そして、エネルギー不足になったときに、その脂肪を分解してエネルギーを生み出し、生きるために使われます。

蓄積された脂肪は肥満をもたらし、あらゆる生活習慣病などのリスクを上げ健康被害がでます。ご自身の適量のエネルギー量を理解して3食の量を調整しましょう。

5大栄養素とは

5大栄養素とは、3大栄養素の炭水化物、タンパク質、脂質にビタミン、ミネラルの2種類が加わったものです。ビタミンは13種類、ミネラルは16種類あります。

この5大栄養素が何故大切かというと、人の体内で作る事が出来ず、生きていく上で、毎日欠かさず外から摂り続けなければならない栄養素だからです。

ビタミンは体の代謝を助ける働き、ミネラルは体の代謝を助ける働き+体の構成成分というざっくりとした役割があります。ビタミンやミネラルはエネルギー源になるものではありません。しかし、体内では常に化学反応が起こりその反応(代謝)を助ける働きがあります。またビタミンやミネラルのそれぞれ固有の働きもあります。3大栄養素がキチンと体で使われていく時に必要な栄養素といっても過言ではありません。

5大栄養素
5大栄養素は生きていく為に必要な栄養素である

糖質とは

三大栄養素のひとつで、体の主要なエネルギー源になるものです。炭水化物は糖質と食物繊維の合計があらわされています。

炭水化物=糖質+食物繊維

糖質は同じエネルギーでもタンパク質や脂質よりも素早く使えるという特徴があります。1gあたり4kcalのエネルギーになります。

ブドウ糖(グルコース)とは

ブドウ糖の分子構造
糖の分子構造

砂糖とご飯、形も味も全く異なりますが、同じ糖質類になります。どちらも体内で消化分解され、ブドウ糖という単糖になります。ブドウ糖はグルコースとも言われ、デンプンを構成する主成分です。吸収されたブドウ糖は、肝臓へ行き、全身へ行きわたり、エネルギーとして使用されます。

肝臓や筋肉では一時的にエネルギーをグリコーゲンという形で貯蔵しています。血中のブドウ糖が不足した場合、エネルギーの必要な臓器へ供給する為に、貯金をしています。特に脳は大量のエネルギーを必要とします。血液内の糖が不足してきたら、グリコーゲンが放出されます。

糖質は太る?

ダイエットをする女性
糖質の摂り過ぎは太る元

このように糖質は、生きていく為のエネルギー源に素早く使われたり、いざと言う時の為に、グリコーゲンとして貯金したりしますが、それでも糖質(炭水化物)過多で、大量の糖を摂ってしまった場合は、余った糖がが中性脂肪として蓄積されます。先ほどのグリコーゲンは速やかに使用できる「普通預金」に対して、中性脂肪はいざというときの備え「定期預金」です。

大量に血液内に糖質が入ると、血糖値が急上昇します。普段の血糖値に戻そうと、膵臓からインスリンというホルモンが出てきて、多い糖を中性脂肪に変えるように指示し、血糖値を下げます。このような働きから、甘いものや炭水化物を摂り過ぎると中性脂肪が蓄積され、肥満になる確率が高くなります。

炭水化物とどう向き合うか

栄養弁当
バランスよく食べる

炭水化物や甘いものを食べ過ぎると太る・・太るなら食べない・・となるのは危険すぎます。糖質は大切なエネルギー源です。ヒトは何をする時もエネルギーが必要になります。その主要なエネルギー源である糖質がとれていなければ、脂質からエネルギーを生み出すこともしますが、筋肉などのタンパク質からもエネルギーを確保するように筋肉の崩壊へと体は傾きます。

また炭水化物が不足する分のエネルギーの確保はタンパク質と脂質になります。必然的におかずが多くなり、肉などのタンパク質の摂り過ぎで肝臓や腎臓に負担をかけたり、腸内環境の悪化、脂質の摂り過ぎでLDL(悪玉)コレステロールの上昇による、動脈硬化や心疾患のリスク↑、おかずの摂り過ぎで塩分過多になり高血圧症など、様々な疾病リスクを上げる事になります

炭水化物(糖質)五か条

3食の食事ではお茶碗1杯程度のご飯を食べる(出来るだけ雑穀米や玄米)
和食を中心に、パンや麺を食べ過ぎない
ダブル炭水化物は絶対しない
おやつを習慣にしない
甘いドリンク類を飲まない

関連ページ
糖質の1日の摂取量(日本人の食事摂取基準2020)

タンパク質とは

タンパク質
体の構成成分をつくるタンパク質

タンパク質は、体の構成成分になるものです。筋肉や臓器、ホルモン、免疫、血管内輸送体、代謝に必要な酵素など、あらゆるものはタンパク質で出来ています。そのカラダのタンパク質の基となるのが、食品の中に含まれるタンパク質です。 またエネルギー源にもなるもので、1g=4kcalのエネルギーになります。

肉類
魚類

大豆
乳製品


などに多く含まれています。これらのタンパク質はアミノ酸バランスがよく、良質なタンパク質と言えます。

タンパク質

アミノ酸とは

タンパク質はアミノ酸という小さな物質の集合体です。身体のタンパク質を構成するアミノ酸は全部で20種類あります。自然界には数多くのアミノ酸が存在しますが、この中の20種類が複雑に組み合わさることによってタンパク質を構成しています。これら20種類のアミノ酸は、体内で合成することができず食事から摂る必要がある「必須アミノ酸」と、体内で必須アミノ酸から合成できる「非必須アミノ酸」に分けられます。

20種類のアミノ酸

必須アミノ酸 9種類

必ず食事から摂らないといけないアミノ酸を「必須アミノ酸」と言います。体内で作る事が出来ない為、外から摂る必要があります。

【スレオニン / 略号:Thr】
【トリプトファン / 略号:Trp】
【ヒスチジン / 略号:His】
【フェニルアラニン / 略号:Phe】
【メチオニン / 略号:Met】
【リジン / 略号:Lys】
【★イソロイシン / 略号:Ile】
【★ロイシン/ 略号:Leu】
【★バリン/ 略号:Val】
★BCAA(分岐鎖アミノ酸) / 略号:BCAA

非必須アミノ酸 11種類

体内でつくることができるアミノ酸です。

【アスパラギン / 略号:Asn】
【アスパラギン酸 / 略号:Asp】
【アラニン / 略号:Ala】
【アルギニン / 略号:Arg】
【グリシン / 略号:Gly】
【グルタミン / 略号:Gln】
【グルタミン酸 / 略号:Glu】
【システイン(シスチン)/ 略号:Cys(Cyss)】
【セリン / 略号:Ser】
【チロシン / 略号:Tyr】
【プロリン / 略号:Pro】

タンパク質の不足と過剰

不足
食事からのタンパク質が不足すると、体力の低下、感染に対する抵抗力の脆弱、傷の回復が遅い、筋肉量の減少、集中力・思考力低下、肌あれ、貧血など多くの不調を招きます。

過剰
タンパク質には窒素が含まれ、代謝の過程でアンモニアが生成されます。便やガスのにおいの元になるものがアンモニアです。アンモニアは肝臓で解毒され、腎臓で排泄されるなどが行われ、外へ出すように働きます。その為、タンパク質の過剰摂取は肝臓や腎臓に負担をかけ、肝硬変などの疾患を起こす原因となりかねません。アルコールも解毒する為に肝臓が働きます。飲み過ぎると肝臓疾患が起こるリスクが上がることとお味理屈です。

タンパク質は必要なもので不足を起こすことは避けないといけませんが過剰にも気を付けるようにしましょう。過度なダイエット、糖質制限で、タンパク質を多く摂ったり、筋肉ブームでプロテインをむやみやたら大量に飲む人が増えています。目先の筋肉や痩せに走って、未来の自分へ大きなリスクを背負うことになりかねません。適量を守って、バランス良く食べることが必要です。

関連ページ
タンパク質の1日の摂取量(日本人の食事摂取基準2020)

脂質とは

脂質とは、脂(油)成分で、カラダを動かすエネルギー源として使われるほか、体内で神経組織、細胞膜、ホルモンなどを作るのに欠かせない成分です。脂肪酸からできていて、肉、魚、野菜など様々なものから摂取できます。

脂質は美と健康の敵?

答えはNOです!

3大栄養素に含まれる脂質は欠かすことができないとても大切な栄養素です。油の摂取がキチンと行われないと、シミやシワの原因になったり、乾燥肌になったりと美肌からかけ離れていきます。一昔前は、カロリー制限を非常によく言われていましたので、油カットが健康の象徴のようになっていました。

油は多くの種類があります。その中で摂って欲しい油と摂り過ぎに注意の油があります。

摂って欲しい油

オメガ3系脂肪酸

オメガ3の油
オメガ3系脂肪酸

不足しがちで積極的に摂って欲しい油は「オメガ3」です。オメガ6は主にサラダ油などに多い油です。オメガ6、3はいずれも必須脂肪酸で、必ず外から摂らないといけない油です。けれど、どうしても過剰になりやすいのはオメガ6で、不足しやすいものはオメガ3です。この2つは摂取割合が大切と言われています。摂取割合が崩れ、オメガ6が過剰に多くなると、肌の乾燥(ドライスキン)をもたらすとも言われています。

オメガ3は血流改善や中性脂肪の低下、血中コレステロール値の低下など、健康、ダイエット、美容に非常に効果が期待できます。日本人は魚離れになってきています。1日に1回は魚を摂るように心がけましょう。また、亜麻仁油、エゴマ油などの油やチアシードにもオメガ3は含まれています。魚不足の時には摂り入れると手軽で良いでしょう。

亜麻仁油やエゴマ油は酸化しやすい油なので、加熱調理には不向きです。生でサラダや冷や奴にかけて摂るようにしましょう。

オメガ9系脂肪酸

他に比較的摂って欲しい油は、オメガ9の油です。コレステロールを低下させる働きがあるといわれています。オリーブオイルや米油などを料理などで使用すると良いでしょう。酸化しにくい油の為、加熱調理にも向いています。

オリーブオイル
オメガ9 オリーブオイルや米油

摂り過ぎに注意が必要な油

バターや肉の脂(飽和脂肪酸)

バターや肉の脂
脂の摂り過ぎ注意

食の欧米化により、肉の摂取が増え、脂の摂取も急激に増えました。マクドナルドが約50年前に日本上陸しています。日本人が肉食をこんなに摂るようになったり、ファーストフードが出来てから僅かな時間しか経っていません。また、パンブームもあり、ふんだんにバターやマーガリンが使用されています。また、お菓子類にも大量に使われています。これらは、悪玉と言われているLDLコレステロール値を上げるリスクが懸念されています。生活習慣病はこの飽和脂肪酸系の摂り過ぎにより起こっている場合も多くあります。

飽和脂肪酸はカラダにとって必要な栄養素ではありますが、摂り過ぎに注意して、過剰摂取は止めるようにしましょう。因みにLDLコレステロールを下げるはたらきは魚油です。気になる方は、魚を積極的に摂るように心がけましょう。

関連ページ
質の1日の摂取量(日本人の食事摂取基準2020)

参考
厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020
厚生労働省 e-ヘルスネット 栄養、食生活

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