無意識に添加物を摂っていた「健康」という名の落とし穴

添加物

著者:池上淳子
管理栄養士/美容食インストラクター
日本ビューティーヘルス協会 会長
池上淳子

世の中には、健康を謳った食品が数多く販売されています。しかしそれは食品を一方向からしか見ていないに過ぎません。360度あらゆる角度からその食品の本質を捉え、購入するか、食べるかを選択する必要があります。ここでは著者が実際に感じたことを書いています。それもひとつの意見や考えに過ぎません。ただ、管理栄養士としての立場から、食品を偏りなく見て判断し感じたことを素直に書いています。反対意見も違った意見もあるかもしれません。少し緩い気持ちでお読み頂けると幸いです。

添加物って体に悪いの?

添加物は、食品の保存期間を延長させ、食中毒やカビ毒などの予防に役立ち、食品の安定供給を担うという、私たちの食の安心安全を支えてきてくれたものです。様々な食品添加物がありますが、日本で使用されている添加物の種類や量には制限があり、安全性評価を得ているものばかりになりますので、毎日食べ続けていても、健康への悪影響は無いと推定され、健康リスクはほぼ無いと言われています。

そんな私たちの食を安全に支えてくれる添加物ですが、どんなものに入っているかというと、主に加工された食品に含まれています。 調味料やお菓子、惣菜、インスタント食品、ドリンク、市販のおにぎりや菓子パンなど様々なものがあります。つまり野菜や肉や魚など素材を購入した場合は使われているものではありません。

添加物は健康を害するものではないですが、出来るだけ自然に近いものを食べたいと思うのは誰しもが感じることでしょう。素材そのものの味や栄養を生かした食事を摂る為には、出来るだけ加工された食品、添加物が多く使用された食品に依存しない生活を望むことがひとつの方法になります。

加工食品

一般的な添加物のイメージ

ある一般の主婦の方からの一言。『悪いものを食べたら胃の壁に穴があいて、悪いものが体の中に入ってガンになるんでしょ?』

衝撃でした。多くの研究者や医師、そして栄養士などは、ガンになる原因は添加物や農薬では無いと言います。ガンになる原因は活性酸素の害やストレス、免疫力の低下など様々なことが考えられます。だからこそ、栄養バランスの良い食事や規則正しい生活習慣、ストレスの軽減などが大切であることが言われています。

けれど、一般的なイメージでは、添加物や農薬、焦げや腐敗した食べ物、こういったものが「体に悪い」と浸透していて、そしてそれらを食べることで体内で悪い成分が悪さをしてガンなどの病気が起こると思われているんだと思います。イメージだと思われますが、身体のメカニズムからして、そんなことはあり得ないことです。

病気

魅力的な健康を謳った食品

健康食品、トクホなど健康を謳った食品は数多く販売され、 商品の表面に大々的に、記載されています。それは私たちが購入するときのひとつの目安として活用されています。
例えば
・脂肪の分解を促進する効果が期待
・血圧を下げる効果
・乳酸菌で腸活
・カロリーハーフ
・コレステロールゼロ
・食物繊維がたっぷり
・野菜一日分
など、様々な期待される健康効果を謳った商品が多く存在します。

トクホ

特定保健用食品(トクホ)について 消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_specified_health_uses/

栄養指導の現場で・・

メタボリックシンドロームの方への栄養指導を行っていました。その方は 空腹時血糖値、HbA1cの数値が高めで糖尿病予備軍であり、その他脂肪肝や高血圧などいくつも数値が悪化した方でした。一日の食生活や生活習慣を聞き取りしたところ、毎日ジュースを2~3本飲んでいることが判明しました。どんなものを飲んでいたかというと、まずスポーツドリンク。スポーツドリンクは夏の暑い汗をだらだらかいているときやスポーツをしている時の水分、ミネラル、エネルギー補給として非常に有効ですが、その方は一日中オフィスで事務仕事。身体を動かすことも汗をかくこともありません。

つまり不要です・・

そして、次に会社の自動販売機に連れて行ってもらい、ある乳酸菌飲料を指さされました。そのドリンクは 、ボトルの正面に「乳酸菌入りで腸に良い」 という謳い文句が書いてあったんです。材料を確認すると、通常のジュースと全く同じ異性化糖(血糖値を急激に上げやすいと言われている業務用の糖)が使用されています。糖尿病予備軍の方が摂るべきドリンクではありません。それをお伝えすると「乳酸菌入りだから体に良いんじゃないの?」と言われました。つまり表に記載されている商品の売り文句のみを見る傾向があり、それは購入する選択肢として相当影響が強いということでした。

乳酸菌飲料

マヨネーズを買いに行ったときのこと・・・

スーパーでマヨネーズを買う為に、売り場に行きました。コレステロールゼロ、カロリーハーフetc・・など様々な種類のマヨネーズが売られています。マヨネーズは油が多く高カロリー、高コレステロールのイメージが定着している為、「太る」「体に悪い」などのイメージがつけられやすいからか、企業努力で作られたんだろうと思いました。

いつもあまり考えず、ノーマルなマヨネーズを買いますが、その時は時間に余裕があり、何を買おうか迷いだしました。そこで 裏の成分を色々見てみたところ・・

マヨネーズの基本的な材料は 油+卵+酢 です。この3つがあれば、自家製マヨネーズを作ることも可能。これは私の予想ですが、「コレステロールが低い」と謳う商品は卵量が少なく、「カロリーが低い」と謳う商品は油が少ないんだと思われます。でもマヨネーズは油と卵が無いと作られないし、そこが少ないと美味しくありません。油や卵は旨味があり、コクがでます。 どうやってトロっとした食感を出すのか、どうやってコクのある美味しさを出すのか。それらの食材が無いという事は・・つまり、それに代わる調味料や添加物が追加されて、味を調整されていることになります。

マヨネーズ

マヨネーズ原材料の比較

ノーマルのマヨネーズに無いものが他のマヨネーズには入っていました。
ノーマルにない材料:黄色のマーカー

某社 マヨネーズ(ノーマル)
食用植物油脂(国内製造)、卵黄、醸造酢、食塩、香辛料/調味料(アミノ酸)、香辛料抽出物、(一部に卵・大豆・りんごを含む)

某社 カロリーハーフ マヨネーズ
食用植物油脂(国内製造)、卵、醸造酢、食塩、砂糖、香辛料、たん白加水分解物/増粘剤(キサンタンガム)、調味料(アミノ酸)、香辛料抽出物、(一部に卵・大豆・りんごを含む)

某社 ライト(80%カロリーカット)マヨネーズ
醸造酢、卵、食用植物油脂、食塩、デキストリン、砂糖、たん白加水分解物、香辛料、香味食用油/増粘剤(キサンタンガム、加工でん粉)、調味料(アミノ酸)、甘味料(ステビア)、香辛料抽出物、(一部に卵・大豆・りんごを含む)

某社 ゼロ ノンコレステロール(マヨネーズ)
食用植物油脂、醸造酢、卵、食塩、砂糖類(水あめ、砂糖)、たん白加水分解物、香辛料/増粘剤(キサンタンガム、グァーガム)、調味料(アミノ酸)、香辛料抽出物、(一部に卵・大豆・りんごを含む)

マヨネーズの種類

実際に買ったマヨネーズは?

結局どれを買ったか・・一番シンプルなマヨネーズにしました。

カロリーは高いかもしれない。
コレステロールは高いかもしれない

けれど、結局シンプルが一番素材の味を楽しめるような気がします。

お茶飲んで痩せる⁉︎そんな夢物語ある訳ない

生徒さんからの質問。あるトクホのお茶を愛飲しているとのことでした。「体脂肪が落ちる」という効果が期待できるお茶だったので、お値段高めですが、頑張って数か月飲み続けていたそうです。

数か月飲み続けていても効果ゼロ
友人も毎日飲んで一年になるが効果ゼロ

Q.「トクホのお茶って効果ないんですかー?」

A.
お茶飲んで体脂肪下がるならこんなラクなダイエット無いよねぇ。体脂肪減らすなら、当然食生活の見直しや運動は必須です。トクホは人での研究もされていますが、あくまで成分の働きの話。人それぞれ体質も生活も違うので何とも言えない。プラセボ効果とは言いませんが、そもそも、トクホに頼る人は、高いお茶をわざわざ買ってそれを飲んでたら他は体を甘やかせても大丈夫という油断がいけないようにも思います。とにかくそういった売り文句に依存せず、ダイエットを頑張ってる中の補助として捉えて下さい。因みに黒ウーロン茶は一緒に食べた油の脂肪吸収阻害効果が期待出来ます。でも、これ飲んでたら揚げ物はいくらでもOKではありません。「今日は油を食べ過ぎるな」という食事の飲み物として、また時々の自分へのご褒美でフライドポテトのお供、、くらいに思って、あくまでも補助として活用しましょう。

トクホのお茶

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売り文句だけではなく本質を見抜き「選食力」を身につけること

色々な健康文句を謳っている商品※には、何がそうさせるのか、その為に失われているものは無いか・・消費者としてどう選ぶのか、その食品を選ぶ力「選食力」を身につけて欲しいと思っています。

※例えば、高カテキンで脂肪分解を謳っているトクホのお茶は、カテキンの苦味を緩和する為に糖が入っていたり、脂肪分解でケルセチンを添加しているものがあったり色々あります。

参考
マスメディアや宣伝広告に惑わされない食生活教育
https://gair.media.gunma-u.ac.jp/dspace/bitstream/10087/7452/1/16_TAKAHASHI.pdf

何かを得る為に何かを失う
何かを得る為に無駄に不必要なものを摂る
だからこそ、シンプルが一番

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これだけ食べていたら健康

『これだけ食べていたら大丈夫!という食べ物は何ですか?』

今まで何度この質問を受けたでしょう。いつも私の出す答えは「これだけ食べていたら大丈夫、というものは無い」身体に良い食べ物、身体に悪い食べ物、そう呼ばれている食べ物はたくさんあります。食品として世に出ているもので、食べてはいけないものはありません。

では何が問題か、、それは偏った食べ方です。

ひとつのものを大量に継続して食べるコトが問題です。身体に良いと言われている食べ物でも、偏って食べ過ぎると身体には毒になることがあります。

納豆って身体に良い食べ物です。これは常識ですよね。確かにその通りで納豆に含まれる良質な植物性タンパク質は私たちの身体の材料になりますし、豊富なビタミンやミネラル、食物繊維も含まれます。何より納豆に含まれるナットウキナーゼは血栓を抑制、血流を促進し、生活習慣病予防に素晴らしい効果を発揮してくれます。

では、身体に良いからと言って、どれだけでも食べていいでしょうか?納豆に豊富なタンパク質は食べ過ぎが持続すると、体内にアンモニアが過剰になり肝臓を腎臓に負担をかけ、疾病の原因となります。他にも大豆イソフラボンのヒトの安全な大豆イソフラボンの一日上限摂取目安量も設定されています。

※因みに納豆を食べるなら1日1〜2パック程度に
参考:厚生労働省 大豆イソフラボン
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/h0202-1a.html
食品安全委員会 大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の 安全性評価の基本的な考え方
http://www.fsc.go.jp/hyouka/hy/hy-singi-isoflavone_kihon.pdf

体に悪いというと、少しだけ摂っても体に悪い、危ないと捉えがち
体に良いというと、いくら摂っても体に良い、大丈夫と考えてしまいがち

内閣府食品安全委員会は「安全な物質はなく安全な量があるだけ」と伝えています。

最後に

いかがでしたか?冒頭に記載している通り、添加物を×と言っている訳ではありません。添加物のおかげで食環境が飛躍的に発達し安心安全に多くの方が食べることが出来るようになったことは事実です。

食品の素材そのものの美味しさを新鮮に味わう為には、加工食品に大きな依存はするべきではなく、食事の基本は野菜、肉、魚、米などの食品を調理してバランス良く食べること、そして上手に加工食品を活用し、食するときは添加物を問題視せず食べてもらえたらと思います。

「選食力」という言葉を書きましたが、私たちは、ほぼ毎日食の選択をする機会があります。その選択をする時のヒントとして本情報を活用してもらえたら幸いです。

Point!

シンプルであること
バランスが良いこと

バランス栄養食

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